講演情報

[P12-6]長期フォローされたPCWH症例における神経症状

堀内 惠美子1, 岡部 慎吾1, 尾花 和子2, 井上 健3, 橋田 秀司1 (1.日本赤十字社医療センター 神経内科, 2.日本赤十字社医療センター 小児外科, 3.国立精神神経医療研究センター 神経研究所 疾病第二部)
【症例】29歳男性. 9ヶ月時にHirschsprung病に対しデュハンメル術施行, 小児期より両側内耳形成不全に伴う重度難聴, 虹彩色素脱失, 頭頂前部の白髪などに加え精神発達遅滞, 下肢優位の筋力低下など神経症状を伴うPCWHとしてフォローアップされていた. 遺伝学的検査(国立精神・医療研究センター 神経研究所 第二部で解析)ではSOX10遺伝子エクソン5にc.918delC変異(p.His306fsTer4)が見出された. この変異は両親解析では認められず, de novo 変異と考えられた.27歳時に小児科から神経内科に紹介時, 四肢は細く,腱反射は低下していたがBabinski反射は両側ともに背屈であった.高度難聴や精神発達遅滞のため音声コミュニケーションはほとんど不可能, 絵カードでの限定的なコミュニケーションのみ可能だった.定期的な施設入所を前に, 脳, 脊髄及び末梢神経について評価した.【検査結果】末梢神経伝導検査では, 正中神経・尺骨神経CMAPでは伝導速度低下, SNAPでは伝導速度低下, 振幅低下がみられ, 下肢脛骨神経, 腓腹神経のCMAP, SNAPは検出不能であった. 脊髄MRIでは脊髄終糸はL2 レベルであったが,脊髄は非常に細く, 殊に白質の低形成がみられた.脳では軽微な内包から脳幹の錐体路のT2-WI 高信号域及び脳幹、小脳の低形成がみられた.【考察】SOX10はシュワン細胞,メラニン含有細胞, 腸管神経節細胞など神経堤由来の細胞の移動や成長, 分化などに関与し, 神経堤由来ではないオリゴデンドロサイトの細胞にも発現し, 髄鞘形成に関連していると考えられる.本症例では脳の髄鞘形成不全の所見は軽度であったが, 脳幹や小脳は低形成, 脊髄は菲薄化し, 脱髄性ニューロパチー所見が見られたことから, 中枢神経・末梢神経ともに髄鞘形成不全があることが示唆された.【結論】SOX10遺伝子変異によるPCWHにおける神経学的症状の長期フォローアップの報告は少ない.今回, 遷延する脱髄型ニューロパチー, 髄鞘形成不全が確認された.