講演情報

[P13-1]術前検査を契機に発見されたロイス・ディーツ症候群3型の新規バリアント

竹下 美保1, 岡田 清治2, 太田 哲郎1,2, 内田 尚孝1,3 (1.松江市立病院 ゲノム診療部, 2.松江市立病院 循環器内科, 3.松江市立病院 乳腺・内分泌外科)
【はじめに】ロイス・ディーツ症候群((Loeys-Dietz Syndrome:以下LDS)は、マルファン症候群に類似する遺伝性結合織疾患であるが、全身動脈の蛇行・口蓋裂・二分口蓋垂・眼間解離などマルファン症候群には認めない特徴を有する。なかでもSMD3を原因遺伝子とするLDS3型は、マルファン症候群より若年で発症する動脈解離および変形性関節症の合併頻度が高い。今回、甲状腺がんの術前スクリーニング検査を契機にマルファン症候群を疑い、新規バリアントのLDS3型と診断した症例を報告する。【症例】38歳女性。1妊1産。身長165.4cm、体重44.6kg、漏斗胸と側彎症を認めるが、その他の症状はない。甲状腺がんを発症し、術前の心機能評価でValsalva洞拡大と僧帽弁逸脱を認めた。家族歴聴取より第1近親者および第2度近親者に複数の大動脈疾患と変形性関節症を認め、マルファン症候群を疑い遺伝カウンセリング外来を受診。遺伝学的検査の結果、SMAD3 遺伝子にフレームシフト変異 c.1258dup(p.Arg420ProfsTer68)をヘテロ接合性に同定した。このバリアントはjMorp8.3KJPNやgnomADデータベースに登録がない新規のバリアントであった。PolyPhen-2ではprobably damagingと示されるものの非病原性を示唆するin silico 解析もあった。しかし、フレームシフトにより機能異常が予測されることや、臨床症状や家族歴からLDS3型と同等の対応が必要であると総合的に判断した。その後、母親にも同様のバリアントが検出されている。【考察】LDS3型は、変形性関節症を高頻度に合併し若年発症の動脈解離を起こす疾患として知られている。本症例も学童期から漏斗胸および側彎症を指摘されており、母親は若年性の変形性関節症を発症していた。動脈解離による突発的なエピソードを回避するためにもロイス・ディーツ症候群の特徴を各診療科で共有し、早期診断および治療に繋がる体制を整える必要がある。