講演情報

[P13-2]母由来のKCNQ1微小欠失によりBeckwith-Wiedemann症候群を合併したQT延長症候群の男児例

小澤 淳一1, 長崎 啓祐1, 原 香織2, 浦川 立貴2, 田中 雅人1, 楡井 淳1, 鏡 雅代2, 大野 聖子3, 齋藤 昭彦1 (1.新潟大学 小児科, 2.国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部, 3.国立循環器病研究センター 分子生物学部)
【背景】Beckwith-Wiedemann症候群 (BWS) は、巨舌、腹壁欠損、過成長を特徴とする先天奇形症候群である。一方、QT延長症候群 (LQTS) は、致死的不整脈により突然死を来し得る遺伝性不整脈疾患である。近年、LQTSの責任遺伝子の一つであるKCNQ1変異によりKCNQ1OT1-Differentially methylated region (DMR) の脱メチル化を来していると推測されるBWS合併例が報告されている。ただし報告例は未だ少なく、その臨床像は十分には明らかでない。【症例】0歳男児。両親、同胞に異常の指摘なし。妊娠13週の胎児エコーで臍帯ヘルニアと診断。胎児期に不整脈指摘なし。在胎30週4日、常位胎盤早期剥離が疑われ、緊急帝王切開で出生。出生体重 1882g (+1.5SD)、Apgar score 1分1点/5分6点であった。出生後、巨舌、半身肥大、火焔状母斑などからBWSが疑われ、パイロシークエンス法によるメチル化解析で、KCNQ1OT1-DMRの低メチル化が確認された。またMS-MLPAおよびアレイCGH検査の結果、母由来アレルにKCNQ1OT1-DMRを含まず、KCNQ1 exon 1a/1bを含む215kbの欠失を同定した。生後3ヶ月時の心電図で、QT延長 (心拍数 144/分、補正QT時間 488ms) を認め、β遮断薬内服を開始、これまで心イベントはない。【考察】心臓におけるKCNQ1の発現は、卵子では母性発現であるが、出生後は両親性発現となる。本症例ではKCNQ1のハプロ不全によりLQTSを発症し、さらにKCNQ1OT1-DMRの低メチル化に関連して母由来アレルのCDKN1C発現が低下しBWSを発症したと推測される。KCNQ1OT1-DMRを含まないKCNQ1微小欠失や変異によりKCNQ1OT1-DMRの低メチル化を来す機序は未解明であり、今後の検討が望まれる。