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[P13-4]左冠尖瘤、大動脈弁逆流、脊柱側弯を認め、遺伝学的検査でFLNAの新規VUS変異を検出した18歳男性例

齋藤 和由1, 鈴木 大次郎1, 鈴木 孝典1, 小島 有紗1, 内田 英利1, 畑 忠善1, 吉川 哲史1, 森崎 裕子2 (1.藤田医科大学 医学部 小児科, 2.榊原記念病院 臨床遺伝科)
【緒言】Filaminファミリーはアクチン結合蛋白の一つで細胞の移動やシグナル伝達・翻訳に関与している。Filamin A (FLNA), filamin B (FLNB), filamin C (FLNC)の3つのアイソフォームが知られており、アミノ酸配列は70%の相同性を保っている。FLNA, FLNBはユビキタスに発生段階で強く発現し多臓器の表現型に関与し、FLNCは主に骨格筋、心筋に発現する。FLNAはY字型をした240-280kDaのポリペプチド鎖であり、ホモまたはヘテロダイマーとして細胞膜に結合し細胞質内へ発現している。Calpainにより切断されC末端のFLNAは様々な転写因子と結合して転写をコントロールしている。FLNAは主に中枢神経・骨格筋、心血管系、呼吸器系、血液系の疾患に関与している。【症例】18歳男児。身長166cm、体重45kg、BMI=16.3。生来健康で家族歴に特記事項なく、川崎病の既往歴もない。X-2CMS前胸部痛があり当院受診し、軽度の大動脈弁逆流に気づかれた。その他の異常所見認められず、ACEI内服し、以後の経過も良好であった。X-1年外来フォローアップ時に、側弯と左冠尖瘤に気づかれたため、Marfan症候群類縁疾患を疑われ、遺伝学的検査を施行した。その結果、FLNA, c.4021-4023. delins. CCC>ACA, c. Pro1341Thrと新規VUS変異を認めた。FLNA異常はX連鎖性遺伝形式であり、男性の場合は胎生/新生児致死であると報告されていたが、脳室周囲結節状異所性灰白質(PVNH)などの中枢神経症状を伴わない大動脈瘤・解離の男性例が報告されている。現時点では、FLNA変異でよく見られるPVNHや大動脈瘤、皮膚・関節症状などは認めていないため、偶発変異である可能性もある。【まとめ】冠動脈左冠尖瘤に大動脈弁逆流を伴い、脊柱側弯症を認めた18歳男性例において、FLNAの新規VUS変異を検出した。