講演情報

[P19-2]親子で異なる表現型を示したCowden症候群の1家系

天雲 千晶1, 花岡 有為子2,5, 香西 亜優美2, 石橋 めぐみ2, 田中 圭紀2, 鶴田 智彦2,5, 金西 賢治2, 池内 真由美3, 阿部 宣子3, 米原 優香5, 隈元 謙介4,5 (1.さぬき市民病院 産婦人科, 2.香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学, 3.香川大学医学部呼吸器・乳腺内分泌外科学, 4.香川大学医学部消化器外科学, 5.香川大学医学部附属病院臨床遺伝ゲノム診療科)
【緒言】Cowden症候群はPTEN遺伝子の生殖細胞病的バリアントが原因の常染色体顕性遺伝疾患で全身に過誤腫性病変を呈し悪性腫瘍の合併が高率に見られる.女性では乳癌,甲状腺癌,子宮内膜癌の発症リスクが高い. 今回我々はCowden症候群の親子で異なる表現型を示した症例を経験したので報告する. 【症例】母:50歳, 2妊1産. 44歳時に右乳癌の既往歴あり. 他院で病歴からCowden症候群が疑われ, カウンセリング後に遺伝学的検査を施行, PTEN遺伝子に病的バリアントが認められCowden症候群と確定診断された. 乳癌内分泌治療の影響で子宮内膜異常所見が継続していたため定期的に婦人科検診を実施しており, 50歳時に内膜組織診で子宮内膜癌を診断. 子宮悪性腫瘍手術を施行しStage1Aだった. 54歳, 乳癌の多発転移再発のため抗がん化学療法中である. 娘:22歳1ヶ月, 未経妊. 母の子宮内膜癌診断1年3ヶ月後に頸部腫瘤のため近医より当院耳鼻咽喉科へ紹介されPET-CTで甲状腺癌と子宮内膜癌が疑われた. 甲状腺全摘し甲状腺濾胞癌pTN0M0であった. 子宮内膜病変は内膜全面掻爬により類内膜癌G1相当, 画像検査で1A期と推定した. カウンセリングで遺伝学的検査を希望され実施, 母親と同じ病的バリアントが検出され娘もCowden症候群が確定した. 妊孕性温存治療の選択も可能であったが, 本人は子宮摘出を希望され単純子宮全摘+両側卵管切除を施行, Stage1Aだった. 23歳1ヶ月, 直腸カルチノイド腫瘍に対して腹腔鏡下低位前方切除を施行しpT1aN0M0であった. 現在も複数診療科でサーベイランス継続中である. 【考察】Cowden症候群では30代後半から子宮内膜癌発症リスクが上昇するとされているが, 本症例の娘はAYA世代に子宮内膜癌を発症した. 妊孕性温存も選択しうる状況であったが, 実母の病状経過も影響し根治療法を希望された. 治療方針決定に際しては遺伝性腫瘍の背景を考慮し自発的に意思決定できるようサポートすることが重要と思われた.