講演情報

[P19-4]日本人のVHL遺伝学的検査の報告

田村 賢司1, 金指 勇樹2, 前嶋 和紘2, 蘆田 真吾1, 川田 千明1, 辛島 尚1, 山崎 一郎1, 小杉 俊一2, 寺尾 知可史2, 桃沢 幸秀2, 井上 啓史1, 執印 太郎1, 中川 英刀2 (1.高知大学 医学部 泌尿器科学講座, 2.理化学研究所 生命医科学研究センター)
【緒言】フォン・ヒッペル・リンドウ(Von Hippel-Lindau;VHL)病は、3番染色体短腕にあるVHL遺伝子変異を起因として、中枢神経系と網膜の血管芽腫、腎病変(腎細胞癌や腎嚢胞)、副腎の褐色細胞腫、膵病変(神経内分泌腫瘍や膵嚢胞)などが多発性、異時性に発症する常染色体顕性遺伝の遺伝性腫瘍症候群である。【目的】高知大学泌尿器科におけるVHL遺伝学的検査の結果を検証する。【対象と方法】1997~2022年の25年間に、日本国内の114施設でVHL病と臨床診断された患者またはVHL病が疑われた患者に対して、遺伝学的検査(ダイレクトシークエンス法、MLPA法)をおこなった。206家系(446人)を対象として、診断率、遺伝子変異の種類、genotype-phenotype correlationについて詳細に調査した。さらにNMI (no mutation identified)の家系について、全ゲノムシークエンスおよびVHL遺伝子などのdeep target seqをおこなった。【結果】206家系中、遺伝子診断が可能であったのは175家系(85%)であり、ダイレクトシークエンス法で診断されたのが134家系(65%)、MLPA法で診断されたのが41家系(20%)であった。残りの31家系(15%)はNMIであった。VHL病のtypeにより変異の種類やその頻度に違いがみられた。type 1ではlarge deletion(27%)やtruncating mutation(23%)を多く、type 2ではmissense mutation(71%)、特にコドン167(p.Arg167Trpまたはp.Arg167Gln)のmissense mutationを多く認めた。さらにNMIの家系の中に、VHL病的バリアントの体細胞モザイクが3家系、VHL promoter領域の構造異常が1家系、 BAP症候群が1家系(BAP1変異)、PPGLが1家系含まれていた (SDHB変異)。