講演情報

[P19-5]Prader-Willi症候群としてのフォローアップ中にメチル化試験によりAngelman症候群と診断された1例

下山 麻友1, 緒方 勤1, 宮本 健1, 小島 梨紗2 (1.浜松医療センター ゲノム診療センター, 2.浜松医科大学医学部附属病院 遺伝子診療部)
【背景】Prader-Willi症候群(PWS)は、15q11-q13を責任領域とするインプリンティング疾患で、母性ダイソミー、父由来インプリンティング領域の欠失、エピ変異を主たる原因とする。遺伝学的検査としては、最も高頻度に見られる欠失解析を目的として、従来から保険収載されているFISHが通常第1選択として行われている。しかし、FISHでは欠失の有無は判定できるが、その親由来は同定できないため、稀にAngelman症候群がPWSと誤診されることが知られている。今回、FISHによりPWSと診断を受けた後、メチル化試験によりASに診断が変更となった症例を経験したので報告する。【症例】2歳7か月の女児。他院にて自然妊娠39週1日で正常分娩により出生した。10か月健診時に発達遅滞を指摘され、1歳0か月からリハビリが開始された。食事摂取不良、低身長、筋緊張低下、皮膚色素低下のためPWSが疑われ、1歳2か月時にFISHにより15q11-q13領域の欠失が認められた。その後成長ホルモンが開始され、ファロー目的で当院に紹介された。しかし、顔貌がPWSに特徴的ではなく、痙攣の出現などPWSに一致しない症状が認められたため、1歳8ヶ月時にASが疑われSNURF:TSS-DMRのメチル化試験を施行したところ、ASに一致する高メチル化が認められた。その後てんかんのフォローとリハビリを当院にて継続している。【考察】上記の結果は、乳幼児期に筋緊張低下や皮膚色素低下があり、痙攣や特徴的な顔貌などの顕著な臨床所見を呈さない症例では、FISH検査ASがPWSと誤診される可能性があることを示すものである。現在、このような誤診を防ぐためにも、PWSが疑われた患者においては、現在保険収載されているメチル化試験を実施すべきである。