講演情報
[P19-9]当院における卵巣癌患者に対する相同組換え修復欠損の検査の検討
○北島 百合子1, 朝永 千春1, 高尾 真未2, 村上 亨1, 長谷川 ゆり1, 三浦 生子1, 三浦 清徳1 (1.長崎大学 産婦人科, 2.長崎大学 遺伝カウンセリング部門)
<緒言>卵巣癌の治療には様々な化学療法が用いられていたが、近年、ゲノム不安定性および腫瘍におけるBRCA1/BRCA2(tBRCA)の状態に基づく相同組換え修復欠損(homologous recombination deficiency: HRD)の有無によってPARP阻害剤の適応を考慮するようになった。今回、当院でコンパニオン診断(myChoice診断システム)を用いてHRD検査を施行した卵巣癌患者について検討した。<対象と方法>2021年6月から2022年3月までに当科で卵巣癌に対しmyChoice診断システムによってHRD検査を施行した16人を対象とした。初診時の年齢、既往歴、家族歴、病理診断、HRDの有無、ゲノム不安定性スコア、腫瘍のBRCA1/BRCA2変異の状態、化学療法と維持療法のレジメン、myChoice診断後に遺伝カウンセリングを希望した例について診療録を用いて後方視的に検討した。<結果>対象者16人の平均年齢は61.94歳(範囲42-77歳)だった。全例卵巣癌と診断された後に検体を提出した。病理診断は高異型度漿液性癌が14例、明細胞癌が2例だった。HRD陽性が11例、陰性が5例であり、ゲノム不安定性スコアはHRD陽性例で平均59(範囲45-70)だった。腫瘍におけるBRCA1/BRCA2変異がある例は7例で、そのうちBRCA1に意義ある変異がある例が6例、BRCA2 に意義ある変異がある例が1例あった。全例にパクリタキセル+カルボプラチンによる化学療法が行われた。HRD陽性の11例のうち8例にオラパリブによる維持療法が行われた。HRD陰性例における維持療法はニラパリブが2例、ベバシズマブが3例選択された。myChoice診断システム検査後に遺伝カウンセリングを希望した例が3例あった。遺伝カウンセリング後に全例BRCA検査を希望し、生殖細胞系でBRCA1/2が陽性であることを確認した。<結語>卵巣癌治療においては、化学療法後の維持療法選択に遺伝子検査が重要な役割を担うようになっている。その際、遺伝カウンセリングが果たす役割が大きいことが確認された。