講演情報
[P20-2]NFE2L2遺伝子の新規病的バリアントが同定された頭痛発作と白質信号異常を呈する一例
○岡崎 哲也1, 中村 裕子2, 美野 陽一3, 山田 七子4, 青木 智彩子1, 笠城 典子1,5, 足立 香織1,6, 輿水 江里子7, 宮武 聡子7, 松本 直通7, 難波 栄二1,8, 前垣 義弘1,2 (1.鳥取大学医学部附属病院 遺伝子診療科, 2.鳥取大学 医学部 脳神経小児科, 3.鳥取大学 医学部 小児科, 4.鳥取大学 医学部 皮膚科, 5.鳥取大学 医学部 保健学科 基礎看護学, 6.鳥取大学 研究推進機構研究基盤センター, 7.横浜市立大学 大学院医学研究科 遺伝学, 8.鳥取大学 研究推進機構)
【背景】NFE2L2遺伝子は酸化ストレス応答に関わる転写因子をコードしており、腫瘍組織での報告が多くみられるが、生殖細胞系列の病的バリアントを有する症例の報告は1報4症例のみである。【症例】12歳男児。在胎38週4日、仮死なく出生。皮膚や毛髪、虹彩の色が薄いことが指摘されていた。4ヶ月時、体重増加不良があり精査を行った際、心臓超音波検査で心房中隔欠損を認め、その後僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁閉鎖不全もみられるようになり、現在、利尿剤およびACE阻害剤を内服している。幼児期から皮膚の乾燥傾向があり、4歳時に急性苔癬状痘瘡状粃糠疹にてクラリスロマイシンでの加療を行った。2歳10ヶ月時、数分の有熱時けいれんを認めた。意識障害が遷延したため頭部MRIを行ったところ、両側側脳室後角周囲白質を中心にT2/FLAIR高信号域の散在を認めた。5歳9ヶ月、誘因なく「左手の変な感じ」が出現、左下肢と左顔面にも広がった。約20分後、右側頭部の頭痛が出現した。その後も同様のエピソードを繰り返すため、5歳11ヶ月時入院精査を行った。皮膚や毛髪、虹彩の色が薄いことの他に診察所見に特記事項はなく、頭部MRI所見にも著変はなかった。脳波では前頭部優位の多棘波/棘徐波複合を認め、VEPでは振幅の増大を認めた。その後頭痛発作のコントロールに難渋したが、トピラメートとアミトリプチリンの内服で改善傾向を認めている。未診断疾患イニシアチブ(IRUD)でのエクソーム解析にて、NFE2L2遺伝子に病的バリアント(NM_006164.5: c.100C>G :p.Arg34Gly)を認めた。【考察】既報告では大脳白質異常信号、先天性心疾患、頭痛、皮膚感染症、血中ホモシステイン低値などが知られている。診断後、ホモシステインを確認したところ、6.5nmol/mL(基準値:7.0-17.8)と低値を認めた。繰り返す頭痛発作ならびに心疾患にて加療を行っているが、現時点では有効な治療等は確立しておらず疾患の病態解明、診療の進歩が望まれる。