講演情報

[P20-3]頭髪症状が顕著であったAEBP1の新規バリアントによる古典型様エーラス・ダンロス症候群の成人女性例

永井 爽1,2, 山口 智美1,3,4, 林 周次郎5, 内山 明彦6, 茂木 精一郎6, 藤川 朝海4, 滝口 百合4, 古庄 知己1,3,4,7 (1.信州大学 医学部附属病院 遺伝子医療研究センター, 2.NGSDプロジェクト第2期, 3.信州大学医学部遺伝医学教室, 4.信州大学医学部クリニカル・シークエンス学講座, 5.獨協医科大学医学部皮膚科学講座, 6.群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学, 7.信州大学基盤研究支援センター)
AEBP1における両アリル性の病的バリアントに基づく古典型様エーラス・ダンロス症候群(classical-like Ehlers-Danlos Syndrome type 2; clEDS2)は、重度の関節弛緩および皮膚の過伸展性、腰および脊椎の骨粗鬆症、変形性関節症、柔らかい皮膚、萎縮性瘢痕を伴う創傷治癒の遅延、ならびに肩、股関節、膝、および足首の脱臼を特徴とする。症状は腸管(腸管破裂や腸蠕動運動の低下、ヘルニアなど)および泌尿・生殖器や心・大血管など、多岐にわたり、僧帽弁逸脱および大動脈基部拡張などの血管合併症をきたしうる。これまでに世界で7家系9症例が報告されている。今回、本邦2人目の症例を見出した。症例は家族歴のない女性。幼少期から原因不明の皮膚裂傷の既往が複数あり、手指の関節弛緩が著明であった。足関節の不安定性も著明であり、その後も捻挫を反復していた。20歳代前半に、 EDSが疑われたが医療機関の継続受診には至らなかった。この頃から頭部脱毛症状が見られていた。36歳時、急激な腹痛を認め、救急搬送された際に上腸間膜動脈の多発動脈瘤と上腸管脈動脈瘤の破裂に伴う腹腔内出血と診断された。45歳時、EDSの病型分類を含めた精査目的で当センターに受診した。全身関節可動性亢進(Beighton Score 8/9)、関節変形を認め、皮膚は簿く、過伸展性を認めた。頭髪は全体に薄く縮毛で、体幹部には原因不明の皮膚線条、創部の萎縮性瘢痕、踵部の圧迫性丘疹を認めた。遺伝性結合組織疾患カスタムパネル解析によりEhlers-Danlos症候群(古典型様)の原因遺伝子であるAEBP1遺伝子に、新規のナンセンスバリアントおよび新規の1塩基重複によるフレームシフトバリアントが複合ヘテロ接合性に検出された(NM_001129.4:c.[2296G>T];[2383dup]:p.[Glu766*];[Glu795Glyfs*3])。頭髪の部分無毛・薄毛は、既報告の成人症例にも認められており、成人症例の臨床診断において診断のきっかけとなる所見である可能性が示唆された。