講演情報

[P21-3]未診断疾患イニシアチブ(IRUD)を契機に診断・治療介入できた先天性筋無力症候群の1例

原口 康平1, 里 龍晴1, 伊達木 澄人1, 高尾 真未2, 三嶋 博之3, 吉浦 孝一郎3, 森内 浩幸1 (1.長崎大学病院 小児科, 2.長崎大学病院 ゲノム診療センター 遺伝カウンセリング部門, 3.長崎大学原爆後障害医療研究所 人類遺伝学)
【はじめに】未診断疾患イニシアチブ(IRUD)によるトリオ全エクソーム解析により、臨床診断困難例の約4割が確定診断に至っている。しかし、合併症・予後の予測や適切な遺伝カウンセリングが可能になることはあっても疾患特異的な治療が可能になる例は少ない。【症例】現在10歳男児。父が幼少期に運動発達遅滞を指摘されていた。周産期歴に特記事項なし。生後3ヵ月から哺乳低下、体重増加不良があり、近医小児科で経過をみられていた。1 歳3ヵ月時に筋緊張低下と筋力低下を指摘され、当科へ紹介受診した。独歩は1歳4ヵ月で獲得したが、自力での立ち上がりは2歳であった。血液検査、筋画像、末梢神経伝導速度検査、針筋電図等の精査を行ったが診断に至らなかった。その後、運動発達遅滞に加え、易疲労性や持続的な筋力低下が持続した。6歳時に筋生検を施行したが明らかな異常はなかった。IRUDによるトリオ全エクソーム解析の結果、COLQ遺伝子 に、コンパウンドヘテロ病的バリアント[c.1301G>A , p.C434Y; c.687+1G>C]を同定し、先天性筋無力症候群と診断した。反復刺激試験で減衰現象を認め、疾患に矛盾しない所見であった。10歳時からCOLQ変異による先天性筋無力症候群に有効性が示されているサルブタモール投与を行っている。【考察・結語】先天性筋無力症候群は、神経筋接合部分子の先天的な欠損及び機能異常により、筋力低下や易疲労性を来す疾患であり、原因遺伝子によっては有効な治療法が報告されている。網羅的遺伝子解析による遺伝子診断は、一部の症例において治療の選択肢を広げることを可能にする。