講演情報
[P21-5]新規バリアントを認めた思春期大脳型副腎白質ジストロフィーの一例
○大貫 優子1,2, 鈴木 みづほ1,2, 運崎 愛1,2, 水間 敦士3, 竹下 啓1,2 (1.東海大学 医学部 基盤診療学系 医療倫理学, 2.東海大学医学部付属病院 遺伝子診療科, 3.東海大学 医学部 内科学系 脳神経内科学)
【はじめに】副腎白質ジストロフィーは、中枢神経系の脱髄と副腎不全を主体とするX連鎖性疾患である。小児大脳型、思春期大脳型、成人大脳型、副腎脊髄ニューロパチー等の臨床病型が存在する。典型的な小児大脳型は3-10歳に発症し、数年で寝たきりの経過をとることが多い。一方、11-21歳に発症する思春期大脳型はやや緩徐に進行する傾向にある。ABCD1遺伝子解析にて新規バリアントを認め、臨床経過等から思春期大脳型副腎白質ジストロフィーと診断した一例を経験したので報告する。【症例】27歳男性。中学生までの発達及び学力に問題はなかった。高校生頃から遅刻が多く、バイトで段取りがうまくいかなくなった。心療内科を受診し、ADHDと診断された。20歳時右腓骨神経麻痺を発症し、以後歩行障害が残存した。26歳時脳神経内科へ紹介受診。23歳時、総合IQ61、27歳時MMSE21/30点であった。診察上脳神経系問題なし、明らかな麻痺や失調はないものの四肢の深部腱反射亢進、Babinski徴候陽性、痙性歩行を認めた。また、触覚は両側足関節より末梢で低下、振動覚は両側下腿より末梢で低下、温度覚は両側下肢全体で低下していた。極長鎖脂肪酸はC26:0、C25:0、C24:0ともに上昇あり、ABCD1遺伝子解析では、新規バリアントc.1147del (p.Glu383LysfsTer10)を認めた。ACTH値は正常範囲内であった。全脊髄MRIにてびまん性萎縮を認めたものの、筋電図、伝導速度は正常範囲内であった。頭部MRIにて大脳白質病変を認めた。以上より思春期大脳型副腎白質ジストロフィーと診断した。発症から時間がたっていたため、造血幹細胞移植の適応はないと判断した。【考察】当該症例は、知能低下が出現した高校生頃から10年余りを経ているが独居しており、進行が極めて緩徐であった。このことが診断を遅らせた可能性もある。精神症状や行動異常を認めた場合、発症早期より本疾患を疑うことが推奨される。