講演情報

[P23-2]ファブリー病診断時における、尿中マルベリー小体と遺伝学的検査結果の一致率

中村 勝哉1,2, 黄瀬 恵美子1,3, 石川 真澄1, 向井 早紀4, 竹澤 由夏4, 名取 結加4, 宮崎 あかり4, 井出 裕一郎4, 竹渕 真由4, 七戸 加奈4, 加藤 瑞己4, 鈴木 晴媛4, 古庄 知己1,5, 関島 良樹2 (1.信州大学 医学部附属病院 遺伝子医療研究センター, 2.信州大学 医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科, 3.信州大学 医学部附属病院 看護部, 4.信州大学 医学部附属病院 臨床検査部, 5.信州大学 医学部 遺伝医学教室)
【目的】ファブリー病(FD)は、αガラクトシダーゼ活性の低下の結果、肥大型心筋症、慢性腎不全など全身臓器障害をきたす疾患である。有効な疾患修飾療法が開発され、早期診断の重要性が増しているが、亜型FDの存在や、顕性ヘテロ接合体女性の臨床像が多様であり、典型例以外の早期診断に難渋する例が多い。マルベリー小体は渦巻き状構造の脂肪球、マルベリー細胞はマルベリー小体が充満した上皮細胞で桑の実に類似し多形態的特徴を呈する尿中沈渣物であり、近年、尿中マルベリー小体・細胞の検出を契機に診断に至った症例が多数報告されている。今回我々は、ファブリー病が疑われた者またはその家系員における、尿中マルベリー小体の有無と、最終診断の一致率を検討し、早期診断のための有用性する。【方法】2018年6月から2022年5月に当センターを受診したファブリー病患者およびその家系員(3家系15名)を受診録より抽出、ファブリー病の診断確定時の臨床情報を後方視的に検討した。尿中マルベリー小体の評価は、患者の臨床情報が提供されていない状況で複数の臨床検査技師が行った。【結果】15名の性別は男性6名、女性9名。そのうち、FDと確定者13名、否定された者2名であった。検査実施時点の臨床症状は、4名に肥大型心筋症を認めたが、9名は心・腎障害を認めていなかった。変異陽性全13名で尿中マルベリー小体を認めた。【結論】これまでに、尿中マルベリー小体の感度・特異度などを評価する系統的な研究は少ない。今回の、FD患者および家系内検索を行った家系員15名の検討では、マルベリー小体の有無とその後の臨床診断の結果が完全に一致していた。腎障害を呈していない、心亜型FD家系の女性未発症者においても、尿中マルベリー小体が検出された。発症早期の治療導入例を増やすためにも、臨床検査技師への啓蒙が重要である。