講演情報
[P23-3]ファブリー病におけるマルベリー細胞の立体構造についての検討
○桐林 和代1, 原田 裕一郎2, 梅津 知宏2, 稲垣 夏子1, 黒田 雅彦2 (1.東京医科大学病院 遺伝子診療センター, 2.東京医科大学 分子病理学分野)
【背景と目的】ファブリー病(FD)は、GLA遺伝子を原因遺伝子とするX連鎖性遺伝性疾患である。α-ガラクトシダーゼAの欠損や低下により、グロボトリアオシルセラミド(Gb3)が蓄積することで全身に症状が出現する。FDでは尿中に渦巻状の形態を呈するマルベリー細胞を認めることが知られている。マルベリー細胞の立体構造の報告はなく、今回浮遊しているマルベリー細胞の立体構造について検討することを目的とした。【症例】当院でFDと診断された患者のうち同意の得られた4症例の尿沈査を用いて検討を行った。【方法】採取した尿沈渣を位相差顕微鏡と偏光顕微鏡で観察した。浮遊したマルベリー細胞の多面的な構造を平面画像からスケールをもとにマルベリー細胞の計測値を算出し構造を推定した。さらに位相差顕微鏡で3D再構築されるZ-スタック撮影を試みた。【結果】尿沈渣中で浮遊し回転している像の撮影を行った。マルベリー細胞の形状は糸状の構造物が円を描くようにいくつかの渦巻の円状形態を形成し、いろいろな角度で立体的に形成されていた。渦巻を呈する形態は大小不定の大きさであった。1つの渦巻状の構造自体の厚みは平面的であり、厚みがあるものではなかった。回転し浮遊する過程で形状は多少変化していた。Z-スタックは無蛍光像では明らかな形態描出に至らなかった。【考察】マルベリー細胞は位相差顕微鏡下で正面から確認される渦巻状の形態をもって評価される。位相差顕微鏡下では凹凸のある扁平状または糸状の構造物が浮遊し移動する過程で凝集塊を形成し、渦巻状を呈していると推察された。偏光顕微鏡下では、マルタ十字などの像が確認されるため、渦巻状の内部の高低差を確認する目的でZ-スタックを用いたが、明らかな描出ができなかったため今後蛍光下で再度確認していく。