講演情報

[P24-2]GNASスプライスバリアントによる偽性副甲状腺機能低下症Iaの女児例

佐野 伸一朗1, 岩本 彰太郎2, 松下 理恵3, 加藤 芙弥子4, 増永 陽平4, 藤澤 泰子4, 緒方 勤4,5 (1.静岡県立こども病院 糖尿病代謝内科, 2.三重大学医学部付属病院 小児・AYAがんトータルケアセンター, 3.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 健康解析学講座 薬剤疫学分野, 4.浜松医科大学 小児科, 5.浜松医療センター小児科)
GNAS遺伝子によりコードされるGsαは、近位尿細管、下垂体、甲状腺、性腺等の組織において母由来アレル優位に発現している。偽性副甲状腺機能低下症Ia (PHP-Ia)は、稀な内分泌疾患でPTH抵抗性に加えて、丸顔、肥満、皮下骨腫、知的障害等のAHO徴候を呈し母由来アレルGNAS遺伝子変異により発症する。【症例】7歳女児、新生児期に先天性甲状腺機能低下症と診断された。その後、両側感音性難聴、乳児期肥満、丸顔、発達遅延、多発性皮下骨腫等を呈し5歳時の精査にてPTH抵抗性(Ca 9.3 mg/dL、P 6.0 mg/dL、iPTH 196 pg/dL)を認め臨床的にPHP-Iaと診断した。【家族歴】母:多発性皮下骨腫、父および長男:特記すべきことなし 【遺伝子解析】GNAS遺伝子に母由来splice variant (c.212+2T>C)をヘテロ接合性に同定した。患者由来リンパ芽球から得たcDNAを用いた実験にて、シクロヘキサミド存在下でExon2-4を含むPCR産物に野生型と異なる転写産物を認めた。サブクローニングにより、この変異型転写産物は、Exon2-3間に新たな32bpの挿入を有することを確認した。【考察】母由来GNAS splice variant (c.212+2T>C)によりスプライス異常が発生し変異型転写産物が生じる。この変異型転写産物は、nonsense mediated mRNA decayによる分解を受けるため、患者近位尿細管及び甲状腺において、母由来アレルGsα発現が消失していると考えられる。以上の結果は本例のPHP-Ia発症原因として説明可能である。