講演情報
[P24-3]TSHR遺伝子にc.1387A>G(p.M463V)機能獲得型変異を認めた非自己免疫性甲状腺機能亢進症の1家系
○堀 友博1,2, 松本 英樹1, 森 真以1, 三輪 友紀1, 大塚 博樹1,2, 笹井 英雄1,2, 久保田 一生1,2, 小関 道夫1, 川本 典生1, 大西 秀典1,2 (1.岐阜大学大学院医学系研究科 小児科学, 2.岐阜大学医学部附属病院 ゲノム疾患・遺伝子診療センター)
【背景】自己抗体陰性の甲状腺中毒症の鑑別として、抗体陰性バセドウ病の他に、無痛性甲状腺炎、機能性甲状腺結節、TSH産生腫瘍などが挙げられるが、極めて稀に単一遺伝子異常に伴う家族性の甲状腺機能亢進症が存在する。父がバセドウ病として治療されている家族歴を持つ甲状腺機能亢進症の10歳と8歳の男児同胞例を契機に診断した、TSH受容体(TSHR)遺伝子の機能獲得型変異による家族性非自己免疫性甲状腺機能亢進症の1家系を報告する。【症例】患者1:10歳男児。息切れ、体重減少を主訴に受診した。TSH検出感度以下、FT3 12.11pg/mL、FT4 4.02ng/dL、TRAb検出感度以下、放射性ヨード摂取率24時間値56.6%。MMI内服治療を開始し、甲状腺機能は良好にコントロールされた。患者2(患者1の弟):8歳男児。下痢、体重減少を主訴に受診した。TSH検出感度以下、FT3 15.50pg/mL、FT4 5.62ng/dL、TRAb検出感度以下、放射性ヨード摂取率24時間値59.9%。MMI内服治療を開始し、甲状腺機能は良好にコントロールされた。患者3(患者1、2の父):18歳時よりバセドウ病としてMMI内服治療を継続されている。36歳時点の検査でTRAb検出感度以下。患者1、2、3においてTSHR遺伝子にc.1387A>G(p.Met463Val)変異をヘテロ接合性に認めた。この変異は、機能獲得型変異として過去に世界でこれまでに3家系の症例報告があり、いずれも家族性非自己免疫性甲状腺機能亢進症を発症していることより、本家系の患者も同症と診断した。【考察】自己抗体陰性の甲状腺中毒症の症例において、2世代にわたる家族例の存在、家系内で性差が女性に偏っていない、長期間の抗甲状腺薬の治療で甲状腺機能の変動に乏しいが寛解しない、眼症状を認めないなどの特徴を有する場合、TSHR遺伝子の機能獲得型変異による家族性非自己免疫性甲状腺機能亢進症を念頭に、遺伝学的解析を検討すべきである。既報の症例を含め文献的考察を加え報告する。