講演情報

[P24-4]重症度の異なる低ホスファターゼ症の兄妹例における酵素補充療法による治療経過

菅野 潤子1, 中川 智博1, 川嶋 明香1, 曽木 千純1, 島 彦仁1, 道上 敏美2, 藤原 幾磨3 (1.東北大学大学院医学系研究科 発生・発達医学講座 小児病態学分野, 2.大阪母子医療センター研究所 骨発育疾患研究部門, 3.仙台市立病院小児科)
【背景】低ホスファターゼ症(HPP)はTNSALPの活性低下による骨石灰化障害でTNSALP遺伝子異常による。6病型に分類される各病型は連続性で同じ遺伝子型でも病型が異なる症例が存在する。また経過中に病型が変化する症例も存在する。酵素補充療法(ERT)の重症例以外の適応や治療効果の判定方法の明確な基準は未確立である。重症度の異なる同じ遺伝子型の兄妹にERTを施行し効果が認められたので報告する。【目的】周産期重症型以外におけるERTの適応や治療効果の判定方法の検討。遺伝子型・表現型と重症分類についての検討。【方法】Asfotase Alfa 2mg/kg/回週3回投与。<評価項目>RGI-Cスコア・RSSを用いたくる病様症状の重症度変化。6分間歩行検査(6MWT)による運動能力の評価。尿中PEAと治療量。【症例1妹】胎児期に四肢短縮と彎曲を指摘され出生時のALP値とX線所見から診断。出生後骨所見は進行。遺伝子解析でp.Leu520ArgX86/p.Glu191Gly。5か月時ERT開始。【結果】下肢の弯曲・骨の石灰化は徐々に改善。RGI-Cスコア+2、RSSは0に改善。ERTは2mg/kg/回以下で尿中PEAは低下傾向。【症例2兄】妹の診断を契機に診断。乳歯早期脱落あり運動が苦手。くる病所見はなく骨密度も正常だが腰椎の減高と手指の骨が薄く妹と同じ遺伝子型。運動機能に明らかな障害はないが足首の痛みなどの症状有り。6MWTで基準値の85%、握力も弱く妹の重症度も鑑み症状の進行も懸念されERT開始。【結果】6MWTで歩行距離は延長し握力も上昇し同学年の平均に達し骨痛もX線所見も改善した。ERTは2mg/kg/回以下で尿中PEAは低下傾向。【考察】兄妹の遺伝子型は同じだが重症度は異なっていた。妹は周産期良性型~乳児型。兄は歯限局型~小児型。2例ともERTは有用で2mg/kg/回の維持は要しなかった。尿中PEAは治療効果や投与量の調整に有用。【結論】HPPの症状は多様。ERTはHPPの骨化の改善に有用。今後のERTの適応を考える上で多数例の集積が必要である。