講演情報

[P27-14]男児のX連鎖性点状軟骨異形成症(CDPX1)診断を契機に母親が保因者と判明した1例

新居見 俊和1,3, 井上 貴仁1,3, 古賀 信彦1,3, 音田 泰裕1, 木村 いぶき2,3, 清島 千尋2,3, 讃井 絢子2,3, 三嶋 崇靖3, 高士 祐一3, 八ツ賀 秀一1,3, 倉員 正光2,3, 四元 房典2,3, 大久保 久美子3, 太田 栄治1, 永光 信一郎1 (1.福岡大学病院小児科, 2.福岡大学病院産婦人科, 3.福岡大学病院遺伝医療室)
【緒言】点状軟骨異形成症(chondrodysplasia punctata: CDP)は,骨端軟骨や脊柱周囲の点状石灰化を特徴とするまれな骨系統疾患である.CDPには,arylsulfatase L(ARSL)遺伝子の変異によるX連鎖性潜性末節骨端短縮型CDP(CDPX1)(MIM#302950),X染色体顕性Conradi型CDP(CDPX2)(MIM#302960),常染色体潜性近位肢型CDPなどがある.CDPX1は,重度の鼻骨低形成や低身長,末節骨低形成を伴うものの,生命予後は良好な疾患である.今回,児のCDPX1の診断を契機に,母親が保因者と判明した症例を経験したので報告する.【症例】CDPX1の家族歴なし.在胎34週,出生体重 2,117gで出生した男児(第1子).妊娠経過中に鼻梁陥凹と羊水過多を認め,在胎31週に羊水染色体検査を行ったが,正常男性核型であった.出生後のX線検査で股関節の棒状石灰化及び脊椎の点状石灰化を認め,臨床的にCDPを疑った.両親の同意を得て行ったターゲットシークエンサー解析によりARSL遺伝子全体の欠失を認め,CDPX1と診断した.両親の希望により遺伝カウンセリング後に保因者診断を行った.その結果,母親はARSL遺伝子の欠失をヘテロに有し,保因者と診断した.現在児は1歳時点で脊椎の石灰化は残存しているが,股関節の石灰化は消失している.【考察】児のビタミンK代謝異常症や妊娠中のワーファリン暴露,重症悪阻,母体の全身性エリテマトーデスによっても児にCDPX1と同様の表現型を示すことがある.つまり,遺伝子検査によるCDPの確定診断は,今後の医学的管理や次子への情報提供のために重要となる.しかし,CDPX1は,de novo変異より母親を保因者とする例が多い.児のCDPX1の確定診断によって,母親が保因者である可能性が生じるため,慎重な対応が必要である.保因者診断は,家族への十分な配慮をした上で実施すべきであり,遺伝カウンセリングが必須と考える.