講演情報
[P27-15]胎児期に重症度判定に苦慮した骨形成不全症の1例
○海野 沙織1, 小澤 克典1, 和田 誠司1, 長谷川 冬雪1, 室本 仁1, 杉林 里佳1, 佐々木 愛子1, 柴田 優花2, 和田 友香2, 丸山 秀彦2, 宮嵜 治3, 左合 治彦1 (1.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター, 2.国立成育医療研究センター 新生児科, 3.国立成育医療研究センター 放射線科)
【緒言】骨形成不全症は比較的頻度の高い骨系統疾患の一つで、全身の骨脆弱性による易骨折性や進行性の骨変形、様々な結合組織症状を特徴とする。原因はI型コラーゲンの質的あるいは量的異常であるが、背景となる分子異常が多岐に渡り、症例によって重症度にかなり幅がある。今回、骨形成不全症と胎児診断したが重症度判定に苦慮した症例を報告する。【症例】33歳の1回経産婦で既往歴や家族歴に特記事項はない。胎児の長管骨の短縮と変形を認め、妊娠27週に当院へ紹介された。胎児超音波検査で下肢骨の彎曲と短縮を認め、大腿骨長-5SD、下腿骨長-5~-6SDであった。一方、上腕骨長-2.0SD、前腕骨長-2~-3SDであり、肋骨骨折は認めず胸郭低形成はなかった。児頭大横径(BPD)は+0.6SDで、頭蓋骨のpressure testは陽性であった。妊娠29週の胎児CTでは、頭蓋骨の菲薄化、下肢長管骨の多発する彎曲を認めるが、明らかな肋骨骨折を認めなかった。以上所見より骨形成不全症(Sillence分類IIbまたはIII型)と診断した。長管骨骨折の所見は認めるが、明らかな肋骨骨折や胸郭低形成を認めず重症例としては非典型的であると判断した。骨盤位の適応で妊娠38週1日に選択的帝王切開術を行い、2463gの女児をApgar score 6/9で分娩した。生後に人工呼吸管理は要しなかったが、下肢の長管骨と肋骨に多発する骨折、また右上腕骨にも骨折を認め、出生前に想定していたよりも重症の骨形成不全IIbまたはIII型と診断され管理に苦慮した。生後の遺伝子検査にてCOL1A2遺伝子に変異(Heterozygous,c.2342G>T,p.Gly781Val)を認め、I型コラーゲンの質的異常が考えられた。この変異はpathogenicとされているがこれまでに症例報告はなく、今後同じ変異での症状の重症度の検討が必要である。