講演情報
[P27-16]COL11A2遺伝子の新規ナンセンス変異をホモ接合性に認めた骨系統疾患の症例
○佐々木 佑菜1, 森田 真也1,2, 長 和俊1,3, 河口 哲1,4, 柴田 有花1, 本間 明宏2, 真部 淳3, 渡利 英道4, 矢部 一郎1,5 (1.北海道大学病院 臨床遺伝子診療部, 2.北海道大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科, 3.北海道大学病院 小児科, 4.北海道大学病院 産婦人科, 5.北海道大学病院 脳神経内科)
【緒言】骨系統疾患は骨、軟骨、靭帯など骨格を形成する組織の成長、発達、分化の障害により、骨格の形成、維持に異常をきたす疾患の総称である。現在までに400種類以上の疾患に分類されており、表現型や原因遺伝子も多様である。今回、COL11A2遺伝子の新規ナンセンス変異をホモ接合性に認め両親が保因者であることが判明した症例を経験したので報告する。【症例】発端者は日齢11の男児。在胎38週0日、2796gで出生。前医で両側の四肢短縮(-4.0~-5.0SD)を指摘され、在胎32週4日に当院産科へ紹介となった。経腹超音波検査と胎児骨CT検査にて同様の所見を認め骨系統疾患が疑われた。特記すべき家族歴、血族婚は存在しない。帝王切開で出生後、特異的顔貌(顔面正中部平坦、鼻根平坦)、口蓋裂、小顎症、両側難聴を認め、確定診断を目的に遺伝学的検査を提出した結果、COL11A2遺伝子にc.3280C>T(p.Gln1094Ter)のバリアントをホモ接合性に認めた。これはgnomADやjMorpで頻度報告のない新規のバリアントであり、病因として矛盾しない結果であった。原因探索のためにマイクロアレイ染色体検査が追加された結果、COL11A2遺伝子を含む領域にコピー数変化のないヘテロ接合性の喪失(cnLOH)が認められた。両親は積極的に次子を検討しており、疾患整理や今後の方針に関する情報提供を目的に遺伝カウンセリングを行い、保因者診断の受検に至った。結果、偶然に両親ともに児と同様のバリアントをヘテロ接合性に有している保因者であったことが判明した。【考察】血族婚のない家系にホモ接合性の新規バリアントが認められた場合、片親性ダイソミーや染色体微細欠失等の機序が関連していることが推測されるが、本症例のように、両親ともに当該バリアントの保因者である可能性もある。原因の特定を目的に、あらゆる状況を想定して主診療科と臨床遺伝部門が連携し、情報共有しながら診療にあたったことで、円滑な対応ができたと考えられる。