講演情報

[P27-18]ミトコンドリア病合併妊娠の一症例

菊池 太貴1, 田原 三枝1, 山本 将太郎1, 吉田 智弘1, 小西 菜普子1, 末光 千春1, 瀬尾 尚美1, 福田 恵梨子1, 栗原 康1, 羽室 明洋1, 三杉 卓也1, 中野 朱美1, 馬場 遥香2, 瀬戸 俊之2, 橘 大介1 (1.大阪公立大学 女性生涯医学, 2.大阪公立大学 ゲノム診療科)
【緒言】ミトコンドリア病は核DNAまたはミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常により起こる疾患である。mtDNA3243変異は最もよく認められる変異で、ミトコンドリア脳筋症(MELAS)等全身の様々な臓器に障害を起こす可能性がある。妊娠に際しては早産や妊娠高血圧腎症、妊娠糖尿病等のリスクがあり注意を要する。今回mtDNA3243変異によるミトコンドリア病合併妊娠の一例を経験したので報告する。【症例】34歳、1妊0産。mtDNA3243変異の家族歴があり、28歳時に精査、本人も同変異をもつことが判明した。その際に腎機能低下と糖尿病を指摘された。自然妊娠成立し、妊娠8週に当科に紹介初診となった。初診時のHbA1c(NGSP)は6.5%、血清クレアチニン(Cr)値は1.21mg/dlであった。妊娠前は近医の糖尿病内科で管理されていたが、ミトコンドリア病についての遺伝カウンセリングは受けたことがなかったため、当院ゲノム診療科にて遺伝カウンセリングを行い妊娠におけるリスクも十分説明の上、周産期管理を行った。血糖コントロールは良好であったが、妊娠26週に妊娠高血圧腎症を発症し入院となった。入院時のCr値は1.5mg/dlであった。入院後、腎機能は増悪し、妊娠27週1日Cr値2.03mg/dl、血清カリウム(K)値6.1mEq/lとなった。GI療法にてK値を基準値上限まで低下させた後、緊急帝王切開術を施行した。児は729gの女児でApgar scoreは4/6、臍帯動脈血pHは7.335であった。日齢87日、修正39週4日に後遺症なく退院となった。【結語】妊娠27週で妊娠を終結せざるを得なかったミトコンドリア病合併妊娠の一例を経験した。本疾患では正期産での分娩症例も多数報告されているが、ミトコンドリア病の症状の発現は一様ではなく、本症例のように急激な経過をたどる症例もある。また、出生児については長期観察が必要な疾患であり、妊娠に際しては、それぞれの症状にあわせた妊娠前の遺伝カウンセリングが重要である。