講演情報

[P27-20]周産期にTdPを発症したQT延長症候群女性の次回妊娠予後の検討

柿ヶ野 藍子1, 澤田 雅美1, 中西 篤史1, 神谷 千津子1, 岩永 直子1, 金川 武司1, 吉松 淳1, 根木 玲子1,2 (1.国立循環器病研究センター 産婦人科, 2.国立循環器病研究センター ゲノム医療支援部 遺伝相談室)
【目的】QT延長症候群は、心電図のQT時間延長に伴い、torsade de pointes(TdP)とよばれる多形性心室頻拍を引き起こし、失神や突然死の原因となる疾患である。女性においては、周産期にTdP発症のリスクが高まることが知られている。一方、周産期にTdPを発症した女性の次回妊娠でのTdP発症のリスクについては報告が無い。本研究では、周産期にTdPを発症したQT延長症候群女性の、次回以降の妊娠での周産期予後やTdP発症について、検討した。【方法】当院で2007年から2020年に周産期管理を行ったQT延長症候群女性のうち、周産期にTdPを発症した症例において、その背景や次回以降の周産期予後とTdP合併の有無を後方視的に検討した。本研究では、妊娠期から分娩後6ヶ月までを周産期と定義した。【成績】初回妊娠の分娩後2ヶ月に、失神を契機にTdPとQT延長症候群(1型1例、2型2例)を診断された3例における6妊娠を対象とした。3例中2例では、初回妊娠後に植え込み型除細動器が挿入された。6妊娠において、分娩時の母体年齢の中央値は29.5歳(20-37歳)であった。全例で、胎児毒性の可能性について説明し患者の同意を得た上で、妊娠中から分娩後にかけてβ遮断薬による内服治療が継続され、3例で胎児発育不全を合併した。分娩週数と出生体重の中央値は、37週(35-37週)、2321g(1539-2645g)であった。分娩様式は全例帝王切開で、全て産科的適応によるものであった。6妊娠全てにおいて周産期に植え込み型除細動器の作動を含め、TdPを起こした症例はなかった。【結論】周産期にTdPを発症したQT延長症候群女性の次回以降の妊娠においては、β遮断薬による適切な薬物治療を継続することによって、周産期のTdP再発を抑制し、安全な母体管理を実施できる可能性がある。