講演情報
[P27-21]当科で経験したDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)保因者妊婦の一例
○吉田 智弘1, 田原 三枝1, 菊池 太貴1, 山本 将太郎1, 小西 菜普子1, 末光 千春1, 瀬尾 尚美1, 福田 恵梨子1, 栗原 康1, 羽室 明洋1, 三杉 卓也1, 中野 朱美1, 馬場 遥香2, 瀬戸 俊之2, 橘 大介1 (1.大阪公立大学 女性生涯医学, 2.大阪公立大学 ゲノム診療科)
【緒言】Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)はX連鎖遺伝形式の疾患である。その症状は急速に進行する筋変性と筋力低下で、歩行不能となり呼吸不全や心不全で亡くなることも多い。非常に重篤であり出生前診断が考慮される代表的な疾患である。以前我々は妊娠中期にDMD保因者であることを本人より申告され遺伝カウンセリングを行うも夫へDMD保因者であることを伝えられないまま分娩に至った症例について報告した。同症例が第2子妊娠に至り当科にてその管理を行ったので経過を報告する。【症例】31歳、2妊1産。第1子妊娠の経過:妊娠中期検査で本人のCK高値を認めたため説明した際に自身がDMD保因者であると申告された。夫へは自身がDMD保因者であることを伝えておらず、当院にて遺伝カウンセリングを行ったが妊娠中に夫にDMD保因者であることは伝えられなかった。児は出生後DMDが疑われたため、本人・夫へ小児科医、遺伝カウンセラーより説明を行ったところ、夫の受け入れは比較的良好な様子であった。児は生後5か月、遺伝子検査にてDMDと診断された。第2子目の経過:第1子出生の約1年後に第2子を妊娠し妊娠8週で当科初診となった。主治医からは妊娠初期より出生前診断と遺伝カウンセリングについて情報提供があったが夫婦は出生前診断を希望せず18週になって遺伝カウンセリングを受けた。妊娠40週に3315gの男児を経腟分娩にて出産した。【考察】第1子妊娠中には夫に保因者であることを告げることができず、出生児がDMDの可能性が高いとなった時点で初めて夫に告知することとなった症例であったが、夫婦と第1子の愛着関係は良好であり第2子についてもDMDの罹患有無に関わらず受け入れ良好であった。「重篤な疾患」についてのとらえ方は人それぞれであり症例毎に慎重に対応することが大切である。