講演情報
[P27-4]当院でのPGT-Aにおけるモザイク胚移植の現状について
○黒田 知子, 川崎 奈美, 林 博子, 江川 里枝, 宇佐美 明美, 伊藤 志保, 青山 直樹, 加藤 恵一 (加藤レディスクリニック)
本邦では2019年12月末より日本産科婦人科学会主導による大規模な「体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(preimplantation genetic testing for aneuploidy: PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」が開始され、臨床成績の解析が進められている。当院でも現在までに約1,100組の夫婦から得られた約4,000個の胚に対して検査を実施し、約20%の胚で正倍数性、約73%の胚で明らかな染色体異数性を認めたが、6%前後の胚では染色体の正倍数性を示す細胞と異数性を示す細胞が混在するモザイクであった。PGT-Aにおけるモザイクは、検査に用いた栄養外胚葉由来の細胞にのみ異数性を認め、将来児となる内部細胞塊には異数性を認めない偽性モザイクと、胎盤と児いずれにも正倍数性と異数性の細胞が混在する真性モザイクに分類されるが、PGT-A結果からどちらであるかを判別することは難しい。海外でのモザイク胚移植の報告では、妊娠率は正倍数性胚移植よりも明らかに低く、出産に至った約400症例のうち真性モザイクと確定された症例は1症例のみであったことから、偽性モザイクは健児を得られる可能性が高く、真性モザイクは出生まで至らない可能性が高いと考えられる。本邦におけるPGT-A特別臨床研究開始から2年が過ぎ、症例の集積も進んできたことから、今回我々は、モザイクと判定された胚の取り扱いについて、当院での実際の臨床現場におけるモザイク胚の検出頻度、部位やモザイクの割合等の検査結果と、移植に至った症例の妊娠率、流産率、出生前診断や出産等の転帰の検討から、PGT-A結果をどのように取り扱い、移植後の妊娠経過を推測していくかについての検討を試みる。