講演情報

[P29-1]HBOC診療における問題点 アンケート自由記載データの質的分析から

荒木 尚美1, 川田 莉佳1, 嶽石 あや2, 高田 史男1,2 (1.北里大学病院 遺伝診療部, 2.北里大学大学院 医療系研究科 臨床遺伝医学)
【背景・目的】近年、HBOC診療は大きく変容したが、その変化に直面した現場の声を拾い上げることは、今後の診療体制の整備や充実を図ることに繋がると考えられる。よって本研究は現場における問題点を明らかにし、診療体制充実への一助とする目的で実施した。【方法】全国のがん診療連携拠点病院、国立がん研究センター、地域がん診療病院、がんゲノム医療提供体制のある医療施設、JOHBOC認定施設、全国遺伝子医療部門連絡会議施設に該当する543施設を対象に、乳腺外科、婦人科、泌尿器科、消化器科、遺伝診療科の5科に分け無記名式の質問紙調査を実施した。本研究では質問紙中の「HBOC診療で気づいた点や問題点」の自由記載回答のみを分析対象とし、回答のあった診療科ごとに内容をKJ法にて分類し、カテゴリー化を行なうことで問題点を整理した。調査期間は2021年10月~11月とした。【結果】アンケートは136施設から返却があったが、その中で自由記載項目に回答があった施設は53施設、全体の9.8%であった。乳腺外科、婦人科、泌尿器科、消化器科、遺伝診療科の5科共通の問題点として「自費と保険の線引きの判断が困難」、「癌未発症変異保有者のサーベイランスが保険未適応」、「遺伝カウンセラー等専門スタッフの不在」、消化器科を除く4科共通の問題点として、「BRCA陰性時のマルチジーンパネルの提供と保険未適応」、遺伝診療科を除く4科共通の問題点として「サーベイランス体制の構築」が挙げられていた。また、「MRI下での生検が不可」、「F1やマイチョイスからGCに繋がりにくい」、「プラチナレジメン限定で不便」など、診療科に特化した問題も挙げられていた。【考察】有効回答が1割程度と少なく、得られた結果が対象を十分に反映していないという研究の限界はあるが、全診療科に共通した問題点、各診療科に特化した問題の一部が明らかになった。これら問題点の解決は診療体制充実の一助となると考えられた。