講演情報
[P29-10]当院におけるがんゲノム医療の現状と二次的所見への対応
○高畠 大典, 根来 裕二, 大石 一行, 岡本 卓, 島田 安博 (高知医療センター 乳腺甲状腺外科)
【緒言】包括的がん遺伝子パネル検査(CGP)の保険適応に伴い、保険診療下でのがんゲノム医療が開始され3年近くが経過した。高知県においては高知大学と当院の2施設ががんゲノム医療連携病院としてがんゲノム医療の提供を行っている。当院は2019年4月よりがんゲノム医療連携病院の認定を受けているが体制整備から現在までの実績を報告する。【結果】2019年12月から2021年12月までに計33症例のCGP検査を行なった。年齢中央値は57歳、男女比はほぼ1:1,癌種別では甲状腺癌が28%(9/33)、大腸癌が15%(5/33)、以下肺癌、乳癌、膵癌がそれぞれ9%(3/33)を占めた。パネル別ではF1CDxが48%(16/33)、F1Liquid CDxが18%(6/33)、NCCオンコパネルが33%(11/33)の内訳であった。33例中32例(97%)が解析可能であり、このうちTMB-highを含むactionableなgenomic findingを認めた症例が40%(12/32)であった。このうち治験、患者申し出療養等で治療に結びついた症例は約19%(6/32)となった。癌種別では甲状腺癌5例、大腸癌1例であり、甲状腺癌で高い治療到達率を示した。Germline findingは21%(7/32)に認められ、開示対象となる生殖細胞系列バリアントが判明した症例は6.3%(2/32)であった。内訳は膵癌でのBRCA1が1例、胆嚢癌でのCDH1を1例経験し、いずれも遺伝カウンセリングを行い、CDH1の症例で血縁者へのシングルサイト検査に到達した。今後は2022年の症例も含め追加報告する予定である。【課題】CGP検査出検数は年々増加傾向であるが大腸癌、肺癌、乳癌等のメジャーな癌腫での治療到達率は芳しくなく改善すべき課題は多い。出検数も特定の診療科に集中する傾向をみとめ、担当医の意欲の相違もあり、潜在的な患者需要に対して対応が十分とはいい難い。がんゲノム医療は過渡期であり地方特有の治験へのアクセス制限など多くの問題を抱えているが地方においても全国レベルと同水準のがん治療を提供すべく、今後も継続努力が必要である。