講演情報

[P29-13]日本人新生児におけるアンバウンドビリルビンとUGT1A1バリアントの関連

花房 宏昭, 阿部 真也, 藤岡 一路, 粟野 宏之, 野津 寛大 (神戸大学大学院医学研究科 内科系講座 小児科学分野)
緒言
新生児黄疸の管理は総ビリルビン(TB)で行われているが、アルブミンと結合していない間接ビリルビンであるアンバウンドビリルビン(UB)は血液脳関門を通過するため、新生児黄疸の管理に重要であるとされている。またグルクロン酸抱合に関わるUDP-glucuronosyltransferaseをコードする、UGT1A1のバリアントはTBに関係していることが知られている。しかし、これまでにUBとUGT1A1バリアントとの関連を調べた研究はない。
方法
2010年4月1日から2018年12月31日に当院に入院した新生児に対して診療録を用いた後方視的研究を実施した。2つのUGT1A1バリアント(NM_000463.2:c.211G>A(UGT1A1*6)、NM_000463.2:c.-41_-40dup(UGT1A1*28))を含む診療情報を入手できた484名を対象とした。参加者を高UB群(UB≧1.0μg/dL, n=77)と非高UB群(UB<1.0μg/dL, n=407)の2群に分け、ロジスティック回帰分析を用いてそれぞれのバリアントの野生型に対する調整オッズ比(出生週数、性別、アルブミン値、Apgar scoreで調整)を計算した。
結果
UGT1A1*6のアリル頻度は高UB群で29%、非高UB群で16%、UGT1A1*28のアリル頻度は高UB群で4%、非高UB群で12%と両バリアントとも有意差を認めた。ロジスティック回帰分析では、野生型に対するUGT1A1*6の調整オッズ比は1.8(95%信頼区間: 1.19-2.72, p<0.01)であり、UGT1A1*28の調整オッズ比は0.42(95%信頼区間: 0.18-0.95, p=0.04)であった。
考察
UGT1A1*6は、酵素活性を低下させTBの上昇に関連することが知られているが、今回新たに高UB血症の直接的なリスク因子であることを示した。UGT1A1*28についてはこれまでにアジア圏以外ではTBの上昇に関連するとされている一方で、アジア圏においては保護因子であるという報告がある。今回の結果は、UGT1A1*28は日本人においては高UB血症に対して保護的に働くことを示しており、これはアジアからのTBの報告を支持するものであった。