講演情報

[P29-14]遺伝学的検査結果の解釈に難渋したBRCA2病的バリアントの1例

矢内 洋次1,2, 山田 崇弘2,3,4, 島田 咲2,3, 佐藤 智佳2,3, 多田 真奈美1, 木川 雄一郎1, 岡田 英孝2,3, 杉江 知治1 (1.関西医科大学附属病院 乳腺外科, 2.関西医科大学附属病院 臨床遺伝センター, 3.関西医科大学 産科学婦人科学, 4.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻 医療倫理学・遺伝医療学分野)
【背景】遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome: HBOC)の原因遺伝子であるBRCA1/2の遺伝学的検査が、1.PARP阻害薬のコンパニオン診断、2.乳癌や卵巣癌症例に対するHBOC診断を目的に保険収載された。【症例】45歳女性。33歳で左乳癌の既往。家族歴に、父方祖父が80歳代前立腺癌、父方祖母が50歳代乳癌を認めた。HBOC診断目的にMyriad社のBRCA1/2の遺伝学的検査を施行した結果、BRCA2にc.8488-1G>Aのヘテロ接合の病的バリアントが同定されたが、「MUTATION IDENTIFIED WITH SPECIAL INTERPRETATION」のコメントがあった。【考察】BRCA2 c.8488-1G>A の解釈は、ClinVarの登録でも、ACMGの評価基準からもpathogenicである。このバリアントのヘテロ接合では乳癌や卵巣癌の家系、ホモ接合では軽症ではあるがFanconi貧血の症例の報告があり、矛盾しない。転写産物に関する報告では、Intron 19 retentionやExon 20 skippingによるフレームシフト、Exon 20 del12によるインフレームなど様々であるが、その割合や機能への影響は不明である。そのためMyriad社の報告書ではPARP阻害薬の適格性の判断に関し根拠が不十分との記載であったと考えらえる。以上より、HBCO関連癌の浸透率は、通常より低い可能性はあるが、HBOCとして管理を行う必要があると考える。今回の検査は、HBOCの診断が目的であり、リスク低減手術の検討も含めHBOCとして対応する方針について患者本人も納得された。HBOCであるが、PARP阻害薬の適応はないという状況に関して、患者の理解と納得に難渋した。