講演情報
[P29-4]当院におけるHBOC乳癌診療の変遷と診療科間の連携
○橋本 幸枝1, 坂東 裕子1, 安藤 有佳里1, 有田 美和2, 小名 徹2, 野口 恵美子2,3 (1.筑波大学医学医療系 乳腺内分泌外科, 2.筑波大学附属病院 遺伝診療部, 3.筑波大学医学医療系 遺伝医学)
ここ数年で本邦におけるHBOCを取り巻く診療体制は大きく変化し、それに伴って当院におけるHBOC乳癌診療の診療体制も変化してきた。2018年6月以前はHBOC診療の主体は遺伝診療部であり、自費診療という側面から検査に至る症例は年間0~5例とごく少数であったが、2018年6月以降HER2陰性転移再発乳癌を対象にPARP阻害薬であるオラパリブが保険適応となったことでBRACAnalysisの出検の場は主に乳腺内分泌外科へと変遷し、2018年6月~2020年3月までの乳腺内分泌外科からの出検数は55例であった。それにあたって、遺伝診療部が主体となり院内でHBOCセミナーを開催し、出検が可能な医師の条件としてセミナーへの参加を義務付けた。また同時期より、HBOCをはじめとした遺伝性腫瘍症候群の拾い落としを防ぐ目的で家族歴調査票を作成し、初診時に必ず配布するようになった。これらの遺伝診療部の取組みにより乳腺内分泌外科の主治医間での情報提供の格差が是正された。乳腺内分泌外科としては、他院からのBRACAnalysis出検依頼やサーベイラン希望者に対応すべく科内に遺伝相談外来を設立し、当外来と遺伝診療部間で連携を行って他院からの症例や未発症者についても適宜対応を行なってきた。2020年4月には乳癌卵巣癌既発症かつ一定の基準を満たす患者においてHBOC診断目的のBRACAnalysisや予防的切除、サーベイランスも保険収載されることとなり、以降急速に検査数が増加し、2022年6月現在まででHBOC診断目的の出検数は232例となった。検査結果の返却の際には必ず遺伝カウンセラーが介入するシステムとなっており、予防的切除を希望される場合も遺伝診療部が心理社会的サポートを行なっている。乳癌卵巣癌未発症者については同院の人間ドックでHBOCサーベイランスに特化したコースを選択できるようになった。これまでの当院におけるHBOC乳癌診療の変遷や取組み、診療科間の連携、及びこれからの課題について発表する。