講演情報

[P29-5]myChoiceTM診断システム受検を契機に遺伝性乳癌卵巣癌と診断した一例から考える継続的な遺伝診療の重要性

梅村 なほみ1,2, 谷口 智子1,2, 若井 未央2, 主原 翠2, 渋川 茉莉2, 林 裕子1,2, 玉置 優子1,2, 大路 斐子1,2, 小宮山 慎一1, 片桐 由起子1,2, 森田 峰人1, 中田 雅彦1 (1.東邦大学医療センター 大森病院 産婦人科, 2.東邦大学医療センター 大森病院 臨床遺伝診療部)
【緒言】myChoiceTM診断システムは、腫瘍組織から抽出したDNAを用いて相同組換え修復欠損(Homologous Recombination Deficiency :HRD)を検出することでPARP阻害薬の適応を判断するコンパニオン診断として保険収載されており、HRDに加えてBRCA1/BRCA2病的バリアントの有無も評価する.今回、myChoiceTM診断システム実施によりBRCA2病的バリアントが判明し、確認検査を経て遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)と診断した症例について報告する.【症例】59歳、女性.卵巣腫瘍(卵巣がんの疑い)で当院を紹介受診した.手術療法を経て、卵巣高異型度漿液性癌IIB期(pT2bN0M0)と診断した.PTX+CBDCA+ベバシズマブによる化学療法を開始した直後、myChoiceTM診断システムを提出し、腫瘍組織にBRCA2病的バリアント(c.5576_5579del)を認めた.担当医がHBOCの可能性について改めて情報提供を行い、遺伝カウンセリング後に遺伝学的検査を実施した.生殖細胞系列でも同様のバリアントを認め、サーベイランスや遺伝形式について説明し、乳腺外科で検診を開始した.HBOC診断1年後、維持療法で通院中の患者に家系員の近況などの再聴取をおこなった.HBOC診断時は化学療法による副作用の自覚があったことも影響し、HBOC全般に対する理解が不十分であったこと、遺伝学的検査の結果を血縁者と共有するか現在も心理的葛藤が続いていることが判明した.今後、改めて遺伝診療部での対応を検討中である.【考察】myChoiceTM診断システムはコンパニオン診断であるが、結果により遺伝性腫瘍を考慮し説明をおこなう必要がある.しかし、がんの治療自体の説明に時間を要したり、本症例のように全身状態が優れない状況での説明となったりすることで、単回の説明では十分な理解を得られないこともある.全身状態や治療状況について診療部間で経時的に情報共有をおこない、患者に合わせた時期、環境での遺伝カウンセリング設定を考慮する必要があると考えられた.