講演情報

[P29-8]当院におけるマイクロサテライト不安定性検査後のLynch症候群精査機会提供状況について

階堂 三砂子1,2, 安原 裕美子1,3, 柴 正恵1,4, 中浦 佳子1,4, 横山 拓平1,5, 中田 健6, 齋藤 孝子1,7, 柳下 祐貴子1,7, 髙瀬 未穂1,7, 宮﨑 翔梧1,8, 山村 順1,9 (1.堺市立総合医療センター ゲノムセンター, 2.堺市立総合医療センター 遺伝診療科, 3.堺市立総合医療センター 病理診断科, 4.堺市立総合医療センター 看護局, 5.堺市立総合医療センター 産婦人科, 6.堺市立総合医療センター 大腸肛門外科, 7.堺市立総合医療センター 薬剤技術局, 8.堺市立総合医療センター 事務局, 9.堺市立総合医療センター 乳腺外科)
マイクロサテライト不安定性(MSI)検査は,免疫チェックポイント阻害剤の治療適応判定やLynch症候群(LS)の診断目的で実施される.固形癌では数%にMSI-Highの結果が得られ,うち約6人に1人がLSである.MSI-High症例へLSの遺伝カウンセリングや遺伝学的検査の機会を確実に提供するための当院での取り組みを報告する.【対象】2019年2月~2021年11月に当院でMSI検査を受けた癌患者208例(男性107例,女性101例,20-87歳,平均63.3歳).【介入方法】2019年2月~2020年12月の間は,LSの解説を含めた同意説明文書でMSI検査を実施し,癌診療主科担当医のみで結果説明が行われていた.2020年4月よりゲノムセンターが稼働し,多職種による定期的な情報共有を開始,2021年3月からは病理所見報告書に「MSI-highの10数%がLSであり,確定診断には遺伝学的検査が必要なこと,患者・家族がLSに関する情報提供を受ける機会を逸しないよう配慮が必要なこと,必要に応じて遺伝診療科へ相談を」という内容を追記した.2021年12月からは院内メールで診療情報をリアルタイムで共有し,癌診療主科担当医へ適切なサポートを提供する体制を整えた.【結果】2019年2月~2020年12月に当院で実施したMSI 検査は136件で,うち11例(8.6%)にMSI-Highを認めた(中塚伸一ら,堺市立総合医療センター医学雑誌,2021)が,遺伝診療科受診へ至った症例はなかった.2021年1月~11月では72件のMSI検査を実施,ゲノムセンターで検討した介入を行った結果,MSI-Highを認めた2例とも遺伝診療科へ紹介受診となった.遺伝学的検査を実施しLSの確定診断に至り,今後のサーベイランスや血縁者の健康管理についても情報提供が行えた.【考案】介入前はMSI-Highの結果を得ても,治療中の癌診療に終始しLSの精査を検討する機会を十分に提供できていなかったが,介入後は癌診療主科担当医へのサポート,MSI-High症例に対しての遺伝診療の機会を確実に提供できた.