講演情報
[P29-9]がんゲノム医療における遺伝診療部門と各診療科の連携体制の構築及び当院の現況
○富永 牧子1,2, 和泉 美希子1,6, 櫻井 彩乃1, 奥山 亜由美1,3, 松縄 学1,4, 市倉 大輔1,5, 石田 博雄1,4, 市塚 清健1,3, 坂下 暁子1,4 (1.昭和大学横浜市北部病院 臨床遺伝・ゲノム医療センター, 2.昭和大学横浜市北部病院 こどもセンター, 3.昭和大学横浜市北部病院 産婦人科, 4.昭和大学横浜市北部病院 内科, 5.昭和大学横浜市北部病院 薬剤部, 6.昭和大学病院 臨床遺伝医療センター)
【背景】当院は、2020年1月1日付でがんゲノム医療連携病院に指定され、同年7月より保険診療内でのがんゲノムプロファイリング検査(CGP)の運用を開始した。遺伝診療部門を中心に構築してきた院内の連携体制について報告する。【概要】がんゲノム医療の開始にあたり、がん化学療法運営委員会メンバーと臨床遺伝専門医3名が中心となり、新たな診療部門(臨床遺伝・ゲノム医療センター:以下、当センター)を立ち上げることとなった。CGPの提出に際しては病理部門との連携が重要であり、チェックリスト等を活用し、標本作成が円滑に進むようにした。遺伝性腫瘍との関連について患者の理解を促し、必要時に遺伝カウンセリングにつながるよう、検査前説明は当センターが一括して行い、この時点で可能な限り家系図を作成することとした。エキスパートパネル(EP)後にはチェックリストを兼ねた院内レポートを作成し、主治医による結果開示の標準化をはかっている。また、院内スタッフの理解を深めるため、各診療科での説明会や院内研修会を行った他、EPではがんゲノム医療に関する最新の話題などを「ミニレクチャー」として配布し、自症例の検討がなくてもEPへの参加を促し、スタッフ同士のコミュニケーションの場ともなるよう工夫している。2020年7月から2022年5月まで、CGPの提出は57件であり、新たな治療への到達は5件、presumed germline pathogenic variants(PGPV)の検出は4件であった。PGPVについて遺伝カウンセリングへの来談は2件、残り2件も今後来談予定である。【考察】試行錯誤しながら構築してきたがんゲノム医療体制は、安定して運用できる形となった。検査前説明を遺伝診療部門が行うことで、患者の遺伝性腫瘍に対する理解を深めることができていると考えられた。今後は、がんゲノム医療が、各診療科医師にとってより身近となり、適切なタイミングで患者に提供できるよう、更なる連携をはかっていきたい。