講演情報
[P30-1]家系内に血友病患者を有する妊婦への遺伝カウンセリングと周産期管理
○赤石 理奈1, 長谷川 冬雪2, 津島 智子3, 西山 深雪2, 藤野 佐保1, 藤部 佑哉1, 海野 沙織1, 室本 仁2, 金子 佳代子4, 杉林 里佳2, 小澤 克典2, 和田 友香5, 佐々木 愛子1, 梅原 永能1, 福原 康之3, 和田 誠司2, 井口 晶裕6, 石黒 精6, 左合 治彦1,2 (1.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 産科, 2.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 胎児診療科, 3.国立成育医療研究センター 小児内科系専門診療部 遺伝診療科, 4.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 母性内科, 5.国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター 新生児科, 6.国立成育医療研究センター 小児がんセンター 血液内科)
【目的】血友病保因者女性は凝固因子活性が低下している場合には妊娠・出産に際して出血リスクが高い可能性がある。その児が血友病や有症状保因者の場合には分娩時の頭蓋内出血のリスクが問題となる。しかし、家系内に血友病患者を有する女性が過去に十分な説明を受けていない場合は、自身と児のリスクについて妊娠後に初めて情報提供を受け、妊婦とパートナーが限られた時間内に重大な選択を迫られることになる。今回、家系内に血友病患者を有する保因者診断が未実施の女性へ遺伝カウンセリングを提供し、周産期管理を行った4症例について報告する。【症例】症例1.37歳、1妊0産。母方叔父2人が血友病B患者、妹が保因者。胎児外性器は男性型。遺伝学的検査にて妊娠37週に保因者と診断された。選択的帝王切開術にて男児を出産し、児は凝固因子活性低下を認め血友病と診断された。症例2.41歳、3妊2産。第2子男児が血友病A患者、第1子女児の保因者診断は未実施。胎児外性器は男性型。自然経腟分娩にて男児を出産し、児の凝固因子活性は正常であった。本人は妊娠中に提出した遺伝学的検査で出産後に保因者と診断された。症例3.35歳、1妊0産。兄が血友病A患者。胎児外性器は男性型。自然経腟分娩にて男児を出産し、児の凝固因子活性は正常であった。本人の保因者診断は希望されず未実施である。症例4.26歳、1妊0産。母方祖父と兄が血友病A患者、母が保因者。胎児外性器は女性型。本人の凝固因子活性低値と抜歯後の止血困難のエピソードがある。現在妊娠継続中で遺伝学的検査や分娩様式について検討中。【結論】保因者の可能性のある妊婦へ、自身の周産期のリスクと児のリスク、保因者診断と出生前診断の方法と意義について適切に情報提供を行ない、産科・血液内科・新生児科との連携の下で自己決定の支援をして適切な管理ができるような遺伝カウンセリングが重要である。