講演情報
[P30-11]Leigh脳症の出生前診断における遺伝カウンセリングの1例
○長尾 亜紀, 前田 和寿, 杉本 達朗, 立花 綾香, 近藤 朱音, 森根 幹生, 檜尾 健二 (四国こどもとおとなの医療センター 産婦人科)
【緒言】ミトコンドリア病は、ホモプラスミーで発症する場合には、出生前診断を行える可能性がある。今回我々は、Leigh脳症における出生前診断の遺伝カウンセリングを行った症例を経験したので報告する。【症例】ミトコンドリア病の出生前診断目的に夫婦で来訪した。第1子は、近医でLeigh脳症(MT-ATP6: m.8993T>G)と診断されている。第1回目のカウンセリングでは、ミトコンドリア病は母系遺伝であること、ヘテロプラスミーとホモプラスミーについて説明の上、Leigh脳症はホモプラスミー状態で発症することが多い事、8993変異では、Mutant load:ML(変異mtDNAが全体のmtDNAに占める割合)が異なる組織間で均一であり、受精卵での割球細胞、妊娠初期の絨毛細胞、羊水中の浮遊細胞、胎児から直接採取した細胞ではMLに変化がなく同等であることが多い旨を説明した。また、ホモプラスミーの状態で発症するため、胎児のMLが低値であれば、重篤な罹患児である可能性は低いが、出生前診断にも限界があるため必ずしも上記の条件に当てはまらないことも十分に説明した。その後、妊娠され夫婦で来訪された。再度、上記の説明を行い理解され検査の希望があったため、妊娠11週5日に絨毛採取を行い遺伝子検査に提出した。絨毛検査の結果は、m.899.T>Gの変異率が0.1%で、健常人コントロール0.2%と変わらないため、夫婦には、胎児は重症となる可能性は極めて低いことを説明した。その後、分娩となり現在、児は1歳であるが現在まで症状は認められていない。【結語】今回我々は、ミトコンドリア病の出生前診断とその遺伝カウンセリングを経験した。ホモプラスミーの状態で発症するLeigh脳症は、出生前診断ができる可能性があるが、その限界などについては十分に遺伝カウンセリングを行う必要がある。