講演情報
[P30-15]様々なゲノム検査を経てテンプル症候群と診断がついた一例―diagnostic odysseyにおける遺伝カウンセリングについて考える―
○川端 むつみ1, 鏡 雅代2, 太田 亨3, 水上 都4, 外木 秀文1 (1.社会医療法人母恋 天使病院 臨床遺伝センター, 2.国立成育医療研究センター研究所 分子内分泌研究部, 3.北海道医療大学 先端研究推進センター, 4.札幌マタニティウィメンズホスピタル 小児科)
【緒言】希少疾患の診断には数年を要することもあり、予測不可能な旅(diagnostic odyssey)に例えられる。今回、テンプル症候群の診断までに出生から2年を要した患児を経験した。診断までの旅路における患者家族の思いを振り返り、遺伝カウンセリングの在り方について考察する。
【症例】患児は38週 1518 gで出生した男児。多発先天異常症として生後10か月時に当院に紹介された。筋緊張低下、成長障害、前額突出、大きな目、左難聴等をみとめた。G分染法による染色体分析は正常核型。顔貌の特徴から歌舞伎症候群、ソトス症候群を疑い、それらをターゲットにしたゲノム検査を進めた。NSD1のFISH検査では欠失を認めず、歌舞伎症候群の原因遺伝子KMT2D、KDM6Aいずれにも変異を同定しなかった。1歳4か月の時点で診断未確定例としてIRUDによる全エキソーム解析を依頼した。1歳9か月時、保険収載となったマイクロアレイ染色体検査を両親に提案し実施した。その結果14q11.2-q13.1の11Mb、14q22.3-q32.11の33Mbの範囲がLOHと判定、14番染色体のUPDを疑い臨床所見を再評価の上、テンプル症候群と診断した。加えて14番染色体上のメチル化解析と多型解析を追加実施し、14番染色体母性ダイソミーと診断した。
【考察】小児領域においても遺伝学的検査を実施する機会は増えている。しかし希少疾患が故に一度の遺伝学的検査では診断に至らず、検査を数回繰り返すことも稀ではない。症例の両親は約2年間、患児の先々の姿を良くも悪くも想像し、あらゆる疾患情報を闇雲に検索する生活に疲弊していた。できることがない無力感も大きくなっていた。しかし、診断確定後は自分達に必要な情報を絞ることができたと安堵されていた。遺伝カウンセリングでは、診断までの経過で起こる患者家族の生活の変化とそれに伴う家族の思いの変化に寄り添いながら、診断までの過程を共に進み、診断後もその関わりを継続していくことが重要である。
【症例】患児は38週 1518 gで出生した男児。多発先天異常症として生後10か月時に当院に紹介された。筋緊張低下、成長障害、前額突出、大きな目、左難聴等をみとめた。G分染法による染色体分析は正常核型。顔貌の特徴から歌舞伎症候群、ソトス症候群を疑い、それらをターゲットにしたゲノム検査を進めた。NSD1のFISH検査では欠失を認めず、歌舞伎症候群の原因遺伝子KMT2D、KDM6Aいずれにも変異を同定しなかった。1歳4か月の時点で診断未確定例としてIRUDによる全エキソーム解析を依頼した。1歳9か月時、保険収載となったマイクロアレイ染色体検査を両親に提案し実施した。その結果14q11.2-q13.1の11Mb、14q22.3-q32.11の33Mbの範囲がLOHと判定、14番染色体のUPDを疑い臨床所見を再評価の上、テンプル症候群と診断した。加えて14番染色体上のメチル化解析と多型解析を追加実施し、14番染色体母性ダイソミーと診断した。
【考察】小児領域においても遺伝学的検査を実施する機会は増えている。しかし希少疾患が故に一度の遺伝学的検査では診断に至らず、検査を数回繰り返すことも稀ではない。症例の両親は約2年間、患児の先々の姿を良くも悪くも想像し、あらゆる疾患情報を闇雲に検索する生活に疲弊していた。できることがない無力感も大きくなっていた。しかし、診断確定後は自分達に必要な情報を絞ることができたと安堵されていた。遺伝カウンセリングでは、診断までの経過で起こる患者家族の生活の変化とそれに伴う家族の思いの変化に寄り添いながら、診断までの過程を共に進み、診断後もその関わりを継続していくことが重要である。