講演情報

[P30-16]遺伝カウンセリングは成人難聴者社会的支援に寄与する可能性がある

小林 有美子1, 山本 佳代乃1, 福島 明宗1, 宇佐美 真一2 (1.岩手医科大学 医学部 臨床遺伝学科, 2.信州大学 医学部 人工聴覚器学講座)
【背景】社会の大多数の聞こえる人は多くを聴覚情報に依存して生活しているために、聴覚障害者では情報取得、コミュニケーション、社会適応や人間関係に制限を受けやすく、あらゆるライフステージにおいてその影響が及ぼされる。
【目的】成人聴覚障害者が持つ社会的問題に対し遺伝カウンセリング(以下GC)が寄与する可能性があるか。
【方法】2012年5月~2022年4月までに岩手医科大学付属病院臨床遺伝学科外来で難聴の遺伝学的検査を実施した検査実施時年齢18歳以上の感音難聴症例76例を対象とし、診療録をもとに後ろ向きに調査を行った。発症年齢が先天性と推定されるものを先天性群、発症が言語習得後から40歳までの症例を若年発症群とした。GC内容について診療録内容からタグ付けを行い、それらを項目別に分類した。本研究で実施している難聴の遺伝学的検査は信州大学(承認番号718)の研究倫理審査委員会にて承認され、岩手医科大学の研究倫理審査委員会で実施許可を得ている。
【結果】若年発症群では難聴の家族への影響、人工内耳手術や補聴器などの聴覚補償手段に関する相談が多く、難聴が進行したために生じている就労に関する相談も聞かれた。難聴が進行してから医療的介入・支援を受けておらず、GCが最初の介入となっていたケースもあった。
【考察】成人難聴者GCの有用性に関する論文は極めて少ない。生下時より聞こえない先天性難聴者では自身の原因に関する関心を満たすために遺伝子検査を受ける傾向とされるが1)、若年発症者では聴力進行に伴う様々な問題が語られた。若年発症の成人聴覚障害者は、GCによって情報提供されうる聴覚補償手段や難病診断によって受けられる福祉サービスなどの情報が有用である可能性がある。
1)Kara A. et.al, Journal of Genetic Counseling ,2008