講演情報

[P30-2]X連鎖性遺伝性水頭症の児の母に対しカウンセリングの上保因者診断を実施した一例

高石 侑, 佐藤 浩, 浅井 智奈美, 中林 桃子, 馬場 航平, 信正 智輝, 白神 碧, 田口 友美, 松井 克憲, 梅宮 慎樹, 黄 彩実, 増田 望穂, 池田 真規子, 安堂 有希子, 松尾 精記, 田口 奈緒, 廣瀬 雅哉 (兵庫県立尼崎総合医療センター 産婦人科)
【緒言】X連鎖性遺伝性水頭症(XLH)はX染色体上に存在するL1CAM遺伝子の異常が原因とされ、水頭症の他神経運動発達遅滞、下肢の痙性麻痺、拇指の内転屈曲などの臨床的特徴を持つ疾患である。罹患児の頻度は25000~50000人出生あたり1人、母が保因者である可能性は60~70%とされている。保因者診断には様々な倫理的問題があり、慎重な対応を必要とする。この度児の出生前の画像診断からXLHを疑い、出生後の確定診断を経て母の保因者診断を実施した症例を経験したため報告する。【症例】29歳女性、初回妊娠。妊娠20週の超音波検査で胎児に両側脳室拡大を認めた。脳室拡大以外に胎児異常を認めなかった。妊娠34週に実施した胎児のMRI検査で高度の水頭症、中脳水道の狭窄、拇指の内転屈曲を指摘され、XLHが疑われた。妊娠36週に選択的帝王切開で分娩となった。児は体重3094g(+1.94SD)、頭位44.2cm(+9.5SD)、apgar score7/9(1分値/5分値)であった。高度の水頭症、母指の内転屈曲を認め、XLHが疑われた。遺伝子検査でL1CAM遺伝子のc2248dup p.tyr750LeufsTer36変異をヘミ接合で保有していた。児の母(本人)が保因者である可能性につき、遺伝子検査を希望されたため本人および夫に遺伝カウンセリングを実施した。検査を行ったところ同一変異をヘテロ接合で保持していることが判明し保因者と診断した。今後の妊娠についてはご夫婦で相談予定である。【考察】本症例では家族歴はなく、妊娠中のMRI検査で胎児にXLHが疑われ、出生後に児の診断が確定した。保因者診断における遺伝カウンセリングでは、保因者であった場合の次回妊娠への影響や、着床前診断・出生前診断の可能性や限界についての情報提供を行い、夫婦ともに良好な理解が得られた。また、本疾患のようにX連鎖性遺伝病では母のみが保因者となる可能性が高く、保因者が判明した場合の夫婦の関係性や精神的な影響についても留意し慎重に検査を実施する必要がある。