講演情報

[P30-6]遺伝性乳癌高リスク者に対する支援のための質問紙調査

増井 薫1, 迫村 世志恵1, 岡崎 俊介1,2, 大野 有登3, 二村 学4,5, 浅野 好美4,5, 仲間 美奈3,4, 西久保 敏也1,6 (1.奈良県立医科大学附属病院 遺伝カウンセリング室, 2.奈良県立医科大学 がんゲノム腫瘍内科, 3.近畿大学理工学部 生命科学科, 4.岐阜大学病院 ゲノム疾患・遺伝子診療センター, 5.岐阜大学大学院医学系研究科腫瘍外科学, 6.奈良県立医科大学附属病院 総合周産期母子医療センター 新生児集中治療部門)
【目的】遺伝診療の進歩・普及により、遺伝的な癌の高リスク者に対する適切な遺伝情報の提供が求められている。そこで遺伝性乳癌高リスク者おける遺伝カウンセリング(GC)受診の促進を目的に、GC希望の有無や遺伝に関する意識についてアンケート調査を実施したので報告する。【方法】奈良県立医科大学附属病院および岐阜大学病院の乳腺外科を受診した遺伝性乳癌高リスク者を対象に、無記名式質問紙調査を実施した。遺伝的な乳癌高リスクの基準はNCCNガイドラインの乳癌および卵巣癌の遺伝学的リスク評価(2017年ver.2)を参考に設定した。調査内容は、病歴、血縁者の癌歴、子どもの有無、職業、癌検診歴、GCや遺伝子検査料金への意識、遺伝性が明らかになった場合の心理的及び行動面への影響、GCの希望理由と希望しない理由など全17項目である。【結果】岐阜大学では2018年6月、奈良医大では2021年2月より調査を開始した。回答者は女性43名。年齢の中央値は49歳(32-84歳)であった。GCを希望しない人は6名、GCを希望する人は37名であった。GC非希望者の血縁者の病歴は、遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)の関連癌である卵巣癌、膵癌、前立腺癌の発症者はいなかった。一方、GC希望者ではHBOC関連癌の家族歴がある人が24人(66.7%)であった。GC希望の有無に関係なく、回答者の大部分が子どもへの遺伝を心配する一方、自己の医学管理に積極的な行動への意識を持った回答が少なかった。【考察】家系内にHBOCの関連癌の発症者がいない場合は遺伝への意識が低い事や、遺伝が家族への不安因子になっていること事が調査から読み取れた。GCとは、相談者の不安に寄り添いつつ、正しい情報を提供することで、血縁者だけでなく、自己の医学管理にも有益な遺伝医療につなげていく過程である。遺伝医療の目的は、血縁者への遺伝の可能性を知るだけでなく本人の二次癌発症予防でもあることを、GCを通して患者に啓発していく必要性が考えられた。