講演情報

[P30-9]がんゲノムプロファイリング検査にて検出されたPGPVの確認検査施行に至る患者の葛藤と血縁者の影響

宮崎 幸子1,2, 三浦 彩奈2, 田中 佑弥2, 室田 文子1,2, 石川 亜貴1,2, 高田 弘一3, 櫻井 晃洋1,2 (1.札幌医科大学 医学部 遺伝医学, 2.札幌医科大学附属病院 遺伝子診療科, 3.札幌医科大学附属病院 腫瘍内科)
【背景】がんゲノムプロファイリング検査(CGP)の主たる目的は、自身のがんに効果が期待できる薬剤の探索であるが、同時にPGPVとして生殖細胞系列由来が疑われる病的バリアントが検出された場合、本人の意思により、確認検査を行うことが可能である。確認検査を希望する患者は、自身の治療に関わることは少ないが、血縁者にとっては、その健康管理に役立つ可能性のある有益な情報となるため、受検目的は血縁者のためである場合が多い。【症例】50歳代女性。乳がんの家族歴より40歳代時にBRCA遺伝学的検査を受検、病的バリアントが検出され、HBOCの診断となり、長女が発症前診断として遺伝学的検査を受検し、HBOCの確定診断となった。数年後にCGPを受検、結果開示には次世代である長女が同席し、PGPVとしてBRCA1のほか、PALB2に病的バリアントが検出された。治療と関係ないなら知らなくてもよいとして確認検査はしないと患者自身は語ったが、長女が自分は知りたいと話し、「知る」ことについて両者の意見が分かれた。その後、患者は長女が知りたいなら受検しても良いと話し、長女の「知りたい」という気持を優先させた。確認検査を受検し、PALB2に病的バリアントが検出されたため、次いで長女もシングルサイトにて検査を行った。【考察】CGPの外来にはキーパーソンの同席が望ましいが、その人物が血縁者であった場合、PGPVとして病的バリアントが検出されると、同席者も当事者になる可能性があるため、確認検査の意思決定について、血縁者の意思も考慮される事態が生じうる。遺伝学的検査は本人の自律的な意思が尊重されるとされているが、血縁者間のパワーバランスによる決定も懸念されるため、家族の状況把握や、本人のエピソードへの丁寧な傾聴を行いながら、本人のみならず、その家族全体に対しての支援に努めることが肝要であり、従来の形とは異なる新しい遺伝カウンセリング体制を構築していくことが必要とされる。