講演情報
[P7-10]先天性肺気道奇形4型(CPAM4型)の兄弟発症を契機に生殖細胞系列DICER1病的バリアントを同定した1家系
○升野 光雄1, 中原 康雄2, 永田 美保3, 石原 康貴3, 朝野 仁裕3, 山内 泰子1, 高尾 佳代1,4, 峠 和美1, 大友 孝信1,5 (1.川崎医科大学附属病院 遺伝診療部, 2.国立病院機構岡山医療センター 小児外科, 3.大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学・IRUD解析センター, 4.川崎医科大学附属病院 看護部, 5.川崎医科大学 分子遺伝医学)
【症例】1歳男児【現病歴】37週4日、3354 gで出生。第3子。乳児期早期から巨大臍ヘルニアを認め、13か月時に臍形成手術を施行し、術後の呼吸障害の精査で撮影したCT画像で左先天性肺気道奇形 congenital pulmonary airway malformation(CPAM) [旧表記:congenital cystic adenomatoid malformation of lung]が疑われた。右肺にも複数の小さな肺嚢胞が確認できた。心臓、右肺を圧排するような所見であり、左上葉切除を施行した。病理診断はCPAM4型であるが、胸膜肺芽腫も完全には否定できない所見であった。17か月時、身長 +0.5SD、体重 +1.4SD、頭囲 +2.6SD、独歩可。【家族歴】父親(39歳)は自然気胸手術の既往が2回あり(20歳時は右,30歳時は左)、母親は生来健康、長兄はIRUD エントリー後、12歳時に左S4+5区域切除術を行い、CPAM4型と診断された。次兄は胸部X線写真では肺嚢胞性病変を認めていない。【遺伝学的解析結果】IRUDによる全エクソーム解析:父親と3兄弟に従来報告のないDICER1ヘテロ接合性フレームシフトバリアントを認めた。このバリアント遺伝子から翻訳される短縮されたタンパク質は、重要な機能ドメインであるRNaseIIIaと RNaseIIIbを欠くため機能喪失が想定される。【考察】4世代に渡り胸膜肺芽腫を含めたDICER1関連腫瘍を認めていないが、肺嚢胞が両側性で同胞例、関連所見(気胸と大頭)を認めるため、バリアント保有者の腫瘍サーベイランスを勧奨し、無症状の父親に甲状腺エコー検査で嚢胞性病変を認め、腺腫様結節が疑われた。先天性肺気道奇形4型と胸膜肺芽腫は連続的病変との見解もあり、先天性肺気道奇形4型ではDICER1遺伝学的検査が必要と考えられた。