講演情報

[P7-13]両側角膜混濁、難聴、発達遅滞をきたし8q21.1-q21.3に6.5 Mbの欠失をきたした1例

二宮 伸介1, 徳増 智子2, 鈴木 寿人3, 山田 茉未子3, 武内 俊樹3, 小崎 健次郎3 (1.倉敷中央病院 遺伝診療部, 2.倉敷中央病院 小児科, 3.慶應義塾大学 医学部 臨床遺伝学センター)
【はじめに】先天性の角膜混濁、虹彩角膜癒着は、Peters anomalyの症状として知られている。Peters anomalyに四肢の短縮、関節可動域の異常、先天性心疾患、発達遅滞などを伴う場合はPeters'-Plus syndromeの可能性がある。今回四肢の短縮はないが、両側角膜混濁、虹彩角膜癒着、両側難聴、発達遅滞をきたし、8qに微細欠失が認められた症例を経験したので報告する。【症例】在胎39週、体重3196g、身長 51.4cm で出生した、現在2歳の女児。生下時より両側角膜混濁、虹彩角膜癒着があり当院紹介受診となった。咽頭軟化、気管・気管支軟化症が認められ、CPAPを要した。耳介形成異常がありABRで両側難聴と診断された。視力的には小さなものもつまむことが可能。現在呼吸状態は安定しており、経口摂取は可能である。寝返り、座位保持は可能、有意語はまだない。臨床的にはPeters'-Plus症候群の可能性があるが、四肢の短縮は見られず、診断の確定には至らないため、IRUDに参加しエクソーム解析を行った。【遺伝学的解析結果】8番染色体長腕q21.13-q21.3の領域にかけて、約6.5 Mbの欠失がde novoで認められた。欠失範囲は、 chr8(GRCh37):(81133879-87683326)であった。Peters’-Plus 症候群は、常染色体潜性(劣性)遺伝の疾患で、原因遺伝子はB3GALTL (B3GLCT)であるが、児にバリアントは認められなかった。【考察】同定された欠失領域内で、pLI score>0.9の遺伝子は、WWP1, ZBTB10, E2F5, ZNF704であったが、これまで眼症状との関連性は報告されていない。同部位および、その内側の欠失で眼症状との関連の報告はない。DECIPHERで、欠失領域がオーバーラップしAbnormality of the eyeを有する患者が登録されており、欠失範囲は(chr8(GRCh37):(79564258-86393161))である。今回同定されたde novo欠失と、児の眼症状と関連は明確ではないが、今後の症例の蓄積により知見が得られる可能性がある。