講演情報

[P7-14]軽度の大動脈弁狭窄および肺動脈弁狭窄と三角頭蓋を契機にSHORT症候群と診断された一例

四本 由郁1,2, 原田 敦子1,3, 中田 有紀2, 立花 久嗣4, 村越 誉5, 稲葉 慧6, 和田 敬仁6,7, 小杉 眞司6,8, 小崎 健次郎9, 玉置 知子1 (1.愛仁会高槻病院 遺伝診療センター, 2.愛仁会高槻病院小児科, 3.愛仁会高槻病院小児脳神経外科, 4.愛仁会高槻病院脳神経内科, 5.愛仁会千船病院産婦人科, 6.京都大学病院遺伝子診療部, 7.京都大学大学院ゲノム医療学, 8.京都大学大学院医学研究科社会健康医学系専攻医療倫理学・遺伝医療学, 9.慶応義塾大学医学部臨床遺伝学センター)
はじめに:SHORT症候群は、低身長(S)、関節伸展性亢進(H)、眼球陥没(O)、Rieger奇形(R)、歯牙萌出遅延(T)の頭文字からGorlinにより命名されており、責任遺伝子はPIK3R1である。さらに、Alcantaraらより、PRKCE(OMIM *176975)の新規variantによるSHORT症候群と診断された一例報告がある。
症例:女児。周産期歴特記事項なし。在胎38週4日、出生体重2548g、30歳代父母の第2子として出生。出生時に心雑音を認め、心臓超音波検査にて軽度の大動脈弁狭窄および肺動脈弁狭窄あり。色白で皮膚が薄く、毛髪が細く疎で、次第に三角頭蓋および前額部の突出が顕著となった。歯牙萌出遅延あり、3歳時には著明な頭囲拡大・皮表在静脈怒張が認められた。精査の結果脳静脈の狭窄・蛇行所見を確認し血管内治療を施行。4歳時現在、頭囲+3.6SD、身長・体重は±0SD、精神運動発達は正常範囲内。
遺伝学的検査:心血管系所見から当初はWilliams症候群を疑われたが、G-band・FISH・マイクロアレイ検査にて異常所見なし。未診断疾患イニシアチブ(IRUD)研究にてPRKCE遺伝子にAlcantaraらの報告と同一のvariantがヘテロ接合(新生変異)で見いだされ、SHORT症候群と診断された。
考察:本症例は、既報告例と顔貌や皮膚所見が類似し、低身長や発達遅延を認めない点も類似していた。この既報告例には頭部・脳血管精査の記載はなかった。なおPIK3R1による本症候群の報告にも頭部・脳血管に注目した記載は少ない。今後、脳血管の所見はSHORT症候群の合併症状の1つとして積極的に精査すべきであると考えられた。