講演情報

[P7-3]マイクロアレイ検査が有用だった不均衡型転座によるターナー症候群の一例

中村 明枝1, 森川 俊太郎1, 菱村 希1, 中山 加奈子1, 金子 直哉1, 石津 桂2 (1.北海道大学 医学部 小児科学分野, 2.杜のこどもクリニック)
ターナー症候群を疑った場合、遺伝学的検査としてGバンド法を行い大半の症例は確定診断に至る。今回、Gバンド法で不均衡型転座を同定できず、2021年10月より保険適応となったマイクロアレイ検査によってX染色体短腕欠失を伴う不均衡型転座を同定したターナー症候群の一例を経験したので報告する。[症例]症例は12歳女児。6歳頃より身長は-2.2SD前後で推移し、12歳5ヶ月に成長障害にて近医を受診された。身長 138.0cm(-2.28SD)、体重 53.7kg。肥満度 63.2%、乳房腫大はなく、明らかな外反肘を認め、血液検査にてFSH異常高値、エストラジオール測定感度以下、甲状腺機能やIGF1は正常であった。以上の結果より、ターナー症候群を疑い、Gバンド法を提出したところ、46,X,dup(X)(p11.2p22.1)という結果であった。臨床所見とGバンド法の結果が合致しないため精査目的で当院に紹介となった。当院にて異なる遺伝学的検査としてマイクロアレイ検査を実施したところ、Xp11.3-22.3欠失と13q14.11-q34重複を認めた。FISH法にて同領域の不均衡型転座によるコピー数異常であることが確認した。[考察]近年、次世代シークエンス解析による遺伝子解析やマイクロアレイ検査が保険適応となり、特定の疾患に対して複数の異なる遺伝学的検査を実施可能となった。本症例は、臨床所見と遺伝学的検査による結果が矛盾する場合、別の遺伝学的検査を実施することで確定診断に至る可能性がある事を示唆する教訓的な症例であった。[結論]近年、保険適応となる遺伝学的検査が増え、今後、複数の遺伝学的検査を行うことで遺伝学的原因を同定できる症例が増える事が期待される。