講演情報

[P7-5]長野県立こども病院における先天性・遺伝性疾患を対象とした臨床的遺伝子解析(クリニカルシークエンス)の実施状況

武田 良淳1,2,5, 荒川 経子3, 久保田 紀子4, 山口 智美5,6, 高野 亨子1,5,6, 古庄 知己1,5,6 (1.長野県立こども病院 遺伝科, 2.長野県立こども病院 生命科学研究センター, 3.長野県立こども病院 こころの支援科, 4.長野県立こども病院 検査科, 5.信州大学医学部 遺伝医学教室, 6.信州大学医学部附属病院 遺伝子医療研究センター)
緒言近年の難病医療拡充に伴い、現在191疾患で遺伝学的検査が保険収載され、指定難病や小児慢性特定疾患の診断基準に盛り込まれるなど日常臨床における遺伝子解析の重要性が益々高まっている。当院では、2018年5月から信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センターと共同して保険収載された先天性・遺伝性疾患を中心に臨床的遺伝子解析(クリニカルシークエンス)を実施している。現在までの解析状況について報告する。対象と方法当院遺伝科を受診し、単一遺伝子異常症による遺伝性・先天性疾患の臨床診断または疑いのある患者115名を対象とした。患者および代諾者に対して遺伝カウンセリングを実施し同意を取得、患者末梢血を採取した。株式会社BMLに搬送しDNAを抽出後、信州大学遺伝子医療研究センターでIon PGM Dx/Ion GeneStudio S5を用いた次世代シークエンス(NGS)による候補遺伝子パネル解析(保険診療)を行い、結果を当科での遺伝カウンセリングにより開示した(遺伝カウンセリング加算算定)。成績現在まで111例の解析を終了し、32例で遺伝子変異を同定し確定診断に至った。疾患内訳は頭蓋骨早期癒合症4例(FGFR2, TWIST)、てんかん症候群5例(GABRG2, PCDH19, SCN2A)、先天異常症候群13例(ARID1B, BRAF, CHD7, HRAS, IKBKG, LMX1B, PTPN11, RIT1, SMC1A)、循環器疾患5例(ACVRL1, MYH7, NOTCH1)、結合組織異常症4例(COL5A1, FBN1)、先天代謝異常症1例(GBA)であった。病的意義不明のバリアント(VUS)は6例で認められた。また、陰性例に対する研究的解析により6例で診断が確定した。考察遺伝性・先天性疾患のクリニカルシークエンスにおいて、従来は国内外の他施設との研究協力に依存していた遺伝子解析がより簡便に利用可能となった点など、臨床的意義は極めて大きい。一方で、保険未収載疾患が未だ多く存在すること、VUSの評価や結果陰性例の研究的解析への移行など検討すべき課題も認められた。