講演情報
[P7-6]マイクロアレイ染色体検査が保険適応になって以降、一施設での解析状況
○福井 香織1,2,3, 高瀬 隆太1,2, 原 宗嗣1,2, 今城 透1, 海野 光昭1, 渡邊 順子1,2,4 (1.久留米大学病院 遺伝外来, 2.久留米大学 医学部 小児科学講座, 3.北九州市立八幡病院 小児総合医療センター, 4.久留米大学 医学部 質量分析医学応用施設)
2021年10月にマイクロアレイ染色体検査が保険収載され、各施設で検査提出が可能となり、今まで診断がつかなかった症例の診断に役立てられている。一方、検査会社からは解析データのみの返却となり、実際の診断のためには、各症例の症状とデータをもとに各施設でのさらなる詳細な解析を必要とする。我々は2021年10月から2022年6月に、既存の保険適応検査で診断にいたらなかった症例について、マイクロアレイ染色体検査を実施した。19症例の解析を行い、9例で診断に至った。診断の内訳は、微細欠失・微細重複症候群(MECP2重複症候群、Phelan-McDermid症候群、WAGR症候群、4qテトラソミー、15q22-23欠失症候群)、および欠失領域内に存在する責任遺伝子のヘテロ接合性消失に由来する疾患群 (15q25.2欠失に伴うDiamond-Blackfan anemia、4q22.1欠失に伴う常染色体優性多発性嚢胞腎、1q44欠失に伴うてんかん性脳症)、常染色体潜性遺伝疾患(NPHP1遺伝子変異と片アレルの2q13欠失によるジュベール症候群)であった。また、1例は現在解析中である。現時点で、47.3%の診断率であり、家族、主治医にとっても満足度の高い検査であった。 通常、マイクロアレイ染色体検査のコピー数異常検出率は15-20%と考えられているが、今回はそれよりも高い診断率であった。これは、今までに各種検査を行ったにもかかわらず診断がつかなかった症例が多いといった、事前確率が高くなっていた可能性が大きな要因と考える。本検査が臨床応用可能になった点は臨床現場にとって朗報である一方、バイオインフォマティクスの専門家が手薄な施設においては、臨床遺伝専門医など一部のスタッフの負担も大きくならざるを得ず、解析結果の解釈の難しさを再認識している。本検査による診断の精度を高めるためには、臨床症状の正確な評価とともに、解析ツールを有効に使いこなすスキルアップが求められる。