講演情報

[P7-7]De novoの3q腕内逆位を有し、Gomez-Lopez-Hernandez症候群を疑った男児におけるナノポア長鎖シークエンサーによる切断点解析

村上 博昭1,2,3, 榎本 友美4, 熊木 達郎1, 黒澤 健司1 (1.神奈川県立こども医療センター 遺伝科, 2.岐阜県総合医療センター 小児科, 3.岐阜県総合医療センター 小児療育内科, 4.神奈川県立こども医療センター 臨床研究所)
De novoの3q腕内逆位を有するGomez-Lopez-Hernandez症候群(GLHS)疑いの男児に対して、ナノポア長鎖シークエンサーによる切断点解析を行ったので報告する。 GLHSは非常に稀な先天異常症候群であり、後頭部から側頭部の禿頭、菱脳シナプス(rhombencephalosynapsis)を含む小脳奇形、三叉神経麻痺を三徴とする。その他、頭蓋骨早期癒合、発達遅滞、てんかん、特異顔貌などを示すことが知られているが原因は未だ不明である。症例は生後3ヶ月の男児で、著名な短頭症と側頭部の禿頭、顔貌特徴を示し、染色体検査でde novoの3番染色体長腕腕内逆位[46,XY,inv(3)(q21q25.3)]を有していた。頭部MRIではrhombencephalosynapsisを示し、臨床的にGLHSを疑い精査を開始した。マイクロアレイ染色体検査では3番染色体長腕を含め、疾患関連と考えられるコピー数異常は検出されず、Whole exome sequencingでも明らかな原因は検出できなかった。そこで、ナノポア長鎖シークエンサーによる切断点解析を行ったところ、3q22.3と3q24を切断点とする9.7Mbの逆位を検出した。3q24の切断点は小脳虫部形成に必須なZIC1遺伝子からtelomere側に7.5kb離れた位置に存在した。ZIC1異常症の過去の報告と本症例を比較すると、禿頭以外の症状は全て一致しており、逆位によりZIC1の正常な転写が異常をきたしている可能性が高いと考えられた。頭蓋骨早期癒合やrhombencephalosynapsisなど、ZIC1異常症はGLHSと臨床的に類似点が多く、共通する発症メカニズムを有する可能性も考えられる。