講演情報
[S19-1]希少疾患の診断の進歩: WES再解析/WGS/RNA-seq解析の現状と有用性
○才津 浩智 (浜松医科大学 医学部 医学科 医化学講座)
エクソンを網羅的に解析可能なエクソーム解析(WES)によって、多くの先天異常疾患の原因となるバリアントが同定されており、WESの登場によって加速した疾患原因遺伝子数の増加はピークを過ぎたが、新規疾患遺伝子はコンスタントに報告されている。そういった状況では、定期的なWESデータの見直しは重要であり、コピー数解析も加えることで、より多くの症例で遺伝子診断が可能となる。しかしながら、単一エクソン巻き込んだ欠失や重複、トランスポゾンの挿入といったゲノム構造異常はWESでは同定は困難であり、これらのゲノム変化は全ゲノム解析(WGS)によって同定することが可能となる。一方、WGSで同定される稀なシークエンスバリアントは当研究室の解析パイプラインでは1検体当たり約38,000個あり、そのうち、タンパク質コード領域に位置するバリアントはわずか1%程度で、約半分が遺伝子間の領域、約35%がイントロンに位置している。遺伝子間に位置するバリアントに関してはその評価はいまだ困難であるが、イントロンバリアントに関しては、機械学習を用いたプログラムを用いることでスプライス異常を引き起こす可能性のあるバリアントを同定可能となることが最近報告されている。さらに、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行うことで、スプライス異常や発現量の異常、片アレル性の発現遺伝子を調べることが可能である。RNA-seqにより、バリアントが転写産物に与える影響を直接評価可能となり、非コード領域のバリアントの解釈に有用であるが、転写は細胞特異的であり、どの細胞・組織をRNA-seq解析に用いるかが問題となる。また、多数のバリアントが同定されるWES/WGSでは、候補となる遺伝子を患者表現型から絞り込むことも重要となる。本講演では、遺伝子診断率向上に対する我々の様々な取り組みについて、尿細胞(Human urine-derived stem cells)を用いたトランスクリプトーム解析等を紹介する。