Presentation Information
[T10-O-1]Observations of geologic structure and microstructure associated with strain release at a continental plate boundary fault
*Haruki YOSHIASA1, Jun-ichi ANDO1,2, Kaushik DAS1,2, Sarkar Dyuti Prakash3 (1. Hiroshima University, 2. HiPeR, 3. JAMSTEC)
Keywords:
Bedding plane slip,MBT,Microstructure observation,Frictional heating,dynamic recrystallization
ヒマラヤ地域には、インド亜大陸とアジア大陸の衝突に伴い形成された3つの主要なプレート収束境界断層(主前縁衝上断層(MFT)・主境界衝上断層(MBT)・主中央衝上断層(MCT))が存在する。現在もインド亜大陸は約5cm/yearの速さで北上を続けており、その収束は主にMFTで担われ、それに関連してヒマラヤ地域では地震が発生している。Billham(2019)では、ヒマラヤ地域での沈み込みに伴って蓄積された歪と地震によって解放された歪を計算し、地震によって歪が完全には解放されておらず、一部が蓄積していると結論付けた。蓄積している歪によってMw=8.6レベルの地震が1回、あるいは2回発生する可能性が指摘されている。一方で、プレート境界でどのような地質現象が生じているのかを明らかにすることは歪が本当に蓄積しているのかを考えるうえで重要である。本研究では、プレートの沈み込み過程における脆性変形領域において、プレート間境界での地質現象の把握を目的に、地質調査および岩石の微細組織の観察を行った。 研究対象地域は、インド ヒマチャル プラデシュ州サバスー市に露出するMBTの上盤、約1 Kmの範囲である。地表に露出するMBTは、約10 Maから約0.5 Maの期間に活動したプレート収束境界断層であり、地下260℃の温度で変形した岩石が露出する(Sarkar et al., 2021)。MBTの上盤には、先カンブリア時代の砂岩層が主に分布する。砂岩単層の層厚は約5 cm-30 cmである。また泥岩層(単層の層厚約2 ㎝)との互層も確認できる。 野外調査の結果、以下のことが明らかになった。1)調査地域全域にわたり、多数の層面すべりが確認された。層面すべり面上には条線様のすべり線が発達し、すべり線に沿って微細な石英脈が認められる。また、層面すべりに関連して、層理面に平行なデュープレックス構造やキンクバンドが顕著に発達する。2)キンクバンドから求めた主圧縮軸方向とすべり線から求めたすべり方向は、MBTの傾斜方向にほぼ平行なものが多い。1)と2)の結果は、MBTの上盤では、プレートの沈み込みに伴い層面すべりが卓越することを強く示唆する。層面すべりを受けた砂岩の微細組織観察からは以下のことが明らかとなった。3)層面すべりの多くは、砂岩単層内部に層理面に平行に発達した層厚10 μm -1 mmの複数の剪断面に沿って発達する。4)この各剪断面は小歪から大歪の状態を記録している。小歪から大歪に至る微細組織の特徴は、砂岩層を構成する基質支持の粒径50 μm –100 μmの石英が、剪断に伴ってその間隔を広げて行くことである。間隔を広げながら石英は流体と反応し細粒化が進み、反応によって白雲母が晶出する。晶出した白雲母は(100)が剪断面に平行に配列する。大歪になると、粒径が数mmの白雲母のみから構成されるようになり、顕著なリーデル剪断面が発達する。5)剪断帯の内部には、剪断方向に伸長する粒径数100 μmの波動消光を示す石英が存在し、この様な石英から石英脈が発生している。すなわち石英脈は、砂岩を構成する石英粒子が剪断による摩擦熱によって塑性変形し形成されたことが強く示唆される。この石英脈は、野外において確認できたすべり線に沿って発達する石英脈であると考えられる。6)石英脈の結晶方位をEBSDによって測定した。その結果、c軸が剪断方向に垂直に集中するタイプと剪断方向に集中するタイプがあることが分かった。それぞれbasalすべりとprism<c>すべりによる転位クリープで形成されたと考えられる。basalすべりは300~400℃で、prism<c>すべりは550℃以上で卓越することが知られている。また石英脈中の動的再結晶を受けた石英の粒径は約5 μmである。再結晶粒径による地質差応力計を用いて差応力を見積もると190 MPaとなる。以上の温度と差応力値から石英脈形成時の歪速度を推定すると10-10~10-13 /s及び10-5~10-7 /sとなる。この値は、プレートの沈み込みに際して生じる層面すべりの歪速度と考えられる。本研究は、プレートの沈み込みを起因として生じる歪の一部は、層面すべりの運動、そしてすべりによる摩擦発熱によって開放されている可能性が強いことを示唆する。
〈References〉
Bilham, 2019 “Himalayan earthquakes: a review of historical seismicity and early 21st century slip potential", Himalayan Tectonics Geological Society, London, Special Publications, Volume 483,Pages 423-482
〈References〉
Bilham, 2019 “Himalayan earthquakes: a review of historical seismicity and early 21st century slip potential", Himalayan Tectonics Geological Society, London, Special Publications, Volume 483,Pages 423-482
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