Presentation Information
[T10-O-8]Reaction-Deformation-Fluid Flow Feedback in the MgO hydration expansion reaction: Investigation by hydrothermal reaction experiments and Real-Time measurements
*Fukuma Sakashita1, Atsushi Okamoto1, Kazuki Yoshida2, OTGONBAYAR DANDAR1, Masaoki Uno1 (1. Graduate School of Environmental Studies, TOHOKU University, 2. High Energy Accelerator Research Organization)
Keywords:
Hydration expansion reaction,Permeability,Hydrothermal Reaction Experiments
超苦鉄質岩の蛇紋石化および炭酸化反応は、一般的に顕著な固体体積増加を引き起こす。この岩石の体積膨張は空隙率と浸透率を低下させ、反応の進行を阻害する。一方で、天然の岩石は大規模な蛇紋石化および炭酸化が進行しており、その反応進行のメカニズムや支配要因はよくわかっていない。近年、数値シミュレーションやアナログ実験により、反応速度が流体流動速度よりも速い場合には、体積増加反応によって破壊が生じ、反応が促進される可能性が示された(Shimizu and Okamoto, 2016; Uno et al. 2022)。しかし、これまでの実験では、反応、流体流動、および変形、破壊挙動が同時に計測されておらず、流体流動-反応-破壊のフィードバックシステムはいまだに不明である。本研究では、変形・流体移動・破壊挙動の測定が可能な、新たに開発した実験装置を用いて、ペリクレース焼結体の水和反応(MgO + H2O → Mg(OH)2、体積膨張率:+119%)に関するバッチ式反応実験および流通式反応実験を行い、体積増加反応の進行に伴う浸透率、反応進行度および破壊の時間的変化を調査した。
ペリクレース焼結体(高さ20 mm、直径10 mm)は、高空隙率(連結空隙9-11%)、低空隙率(連結空隙0-0.01%)の2種類を使用した。まず、様々な反応時間によるバッチ式反応実験を行うことで、静水圧条件での試料の反応速度を求めた。流通式反応実験では、外部応力条件(封圧および軸圧)を制御し、全体の反応過程の変化(応力・ひずみ、体積変化、アコースティック・エミッション(AE)、浸透率)をリアルタイムで計測した。実験は、以下の条件で4実験を行った:Exp 1(高空隙率試料、軸圧20 MPa)、Exp 2(高空隙率試料、軸圧40 MPa)、Exp 3(低空隙率試料、軸圧20 MPa、反応終了まで)、Exp 4(低空隙率試料、軸圧20 MPa、反応途中まで)。
バッチ式反応実験において、高空隙率試料では試料が均一に反応したのに対し、低空隙率試料では周りから反応している様子が見られた。このとき、高空隙試料では低空隙率試料より反応速度が約1200倍速いことが確認された。
流通式反応実験では、初期空隙率によって軸ひずみや浸透率の時間発展に大きな違いが見られた。高空隙試料を用いた、Exp1、2では、まず軸圧・軸ひずみ一定で浸透率が低下し、その後軸圧・軸ひずみが最大まで増加した。その後、どちらも体積膨張を伴いながら軸圧・軸ひずみは徐々に減少していったが、浸透率はExp1ではわずかに減少していったのに対し、Exp2では約1桁増加した。このとき、Exp2では軸方向により短縮が見られた。実験後、サンプルは76-80%反応し、周方向に均一に膨張した。これらの結果は、反応初期に外形を変えずに空隙の閉塞が起こり、その後、反応誘起応力が最大となったことを示している。その後、体積膨張を伴いながら低軸圧では試料全体の圧縮によって空隙が詰まることで浸透率が低下するのに対し、高軸圧では軸に平行な方向に微小亀裂が形成されたため浸透率が増加したと考えられる。高空隙率試料を用いた実験では、開始から10~20分以内に膨張が始まったが、低空隙率試料を用いたExp3、4では、反応の開始が観察されるまでにそれぞれ約1500分および2900分を要した。その後、Exp3では浸透率のパルス的な微小増加とともに軸圧・軸ひずみが最大まで上昇し、次に体積膨張を伴いながら再び浸透率のパルス的な微小増加が発生し、最後に体積変化一定で浸透率が大幅に上昇し、最終的に浸透率は初期状態から2桁増加した。浸透率の大幅上昇はAE信号の活性化とともに見られた。Exp3では多くの亀裂同士の接続、Exp4では上流部分から反応し、上下に接続した亀裂中にMg(OH)2が生成されている様子が見られた。これらの結果より、低空隙の岩石では、誘導時間の後、不均一な反応により反応誘起破壊が生じ、浸透率が劇的に変化したことが示唆された。浸透率のパルス的な微小増加は、生じた亀裂中に水が流れ、Mg(OH)2が生成されたことにより亀裂が閉塞したことによるものだと考えられる。
本研究より、MgOの水和膨張反応に関する詳細な反応進行プロセスと差応力下での新たな力学挙動が明らかになった。 (1)体積膨張により生じる差応力によって、力学的に弱いMg(OH)2の変形や微小亀裂が生じ、多孔質岩石でも浸透率が増加しうること、(2)低空隙率の岩石では、長い誘導時間の後に不均一な反応によって反応誘起破壊が生じ、浸透率が劇的に向上することが明らかになった。
[1]Shimizu and Okamoto 2016, Contrib Mineral, 171, 1-18
[2]Uno et al., 2002 PNAS, 119.3
ペリクレース焼結体(高さ20 mm、直径10 mm)は、高空隙率(連結空隙9-11%)、低空隙率(連結空隙0-0.01%)の2種類を使用した。まず、様々な反応時間によるバッチ式反応実験を行うことで、静水圧条件での試料の反応速度を求めた。流通式反応実験では、外部応力条件(封圧および軸圧)を制御し、全体の反応過程の変化(応力・ひずみ、体積変化、アコースティック・エミッション(AE)、浸透率)をリアルタイムで計測した。実験は、以下の条件で4実験を行った:Exp 1(高空隙率試料、軸圧20 MPa)、Exp 2(高空隙率試料、軸圧40 MPa)、Exp 3(低空隙率試料、軸圧20 MPa、反応終了まで)、Exp 4(低空隙率試料、軸圧20 MPa、反応途中まで)。
バッチ式反応実験において、高空隙率試料では試料が均一に反応したのに対し、低空隙率試料では周りから反応している様子が見られた。このとき、高空隙試料では低空隙率試料より反応速度が約1200倍速いことが確認された。
流通式反応実験では、初期空隙率によって軸ひずみや浸透率の時間発展に大きな違いが見られた。高空隙試料を用いた、Exp1、2では、まず軸圧・軸ひずみ一定で浸透率が低下し、その後軸圧・軸ひずみが最大まで増加した。その後、どちらも体積膨張を伴いながら軸圧・軸ひずみは徐々に減少していったが、浸透率はExp1ではわずかに減少していったのに対し、Exp2では約1桁増加した。このとき、Exp2では軸方向により短縮が見られた。実験後、サンプルは76-80%反応し、周方向に均一に膨張した。これらの結果は、反応初期に外形を変えずに空隙の閉塞が起こり、その後、反応誘起応力が最大となったことを示している。その後、体積膨張を伴いながら低軸圧では試料全体の圧縮によって空隙が詰まることで浸透率が低下するのに対し、高軸圧では軸に平行な方向に微小亀裂が形成されたため浸透率が増加したと考えられる。高空隙率試料を用いた実験では、開始から10~20分以内に膨張が始まったが、低空隙率試料を用いたExp3、4では、反応の開始が観察されるまでにそれぞれ約1500分および2900分を要した。その後、Exp3では浸透率のパルス的な微小増加とともに軸圧・軸ひずみが最大まで上昇し、次に体積膨張を伴いながら再び浸透率のパルス的な微小増加が発生し、最後に体積変化一定で浸透率が大幅に上昇し、最終的に浸透率は初期状態から2桁増加した。浸透率の大幅上昇はAE信号の活性化とともに見られた。Exp3では多くの亀裂同士の接続、Exp4では上流部分から反応し、上下に接続した亀裂中にMg(OH)2が生成されている様子が見られた。これらの結果より、低空隙の岩石では、誘導時間の後、不均一な反応により反応誘起破壊が生じ、浸透率が劇的に変化したことが示唆された。浸透率のパルス的な微小増加は、生じた亀裂中に水が流れ、Mg(OH)2が生成されたことにより亀裂が閉塞したことによるものだと考えられる。
本研究より、MgOの水和膨張反応に関する詳細な反応進行プロセスと差応力下での新たな力学挙動が明らかになった。 (1)体積膨張により生じる差応力によって、力学的に弱いMg(OH)2の変形や微小亀裂が生じ、多孔質岩石でも浸透率が増加しうること、(2)低空隙率の岩石では、長い誘導時間の後に不均一な反応によって反応誘起破壊が生じ、浸透率が劇的に向上することが明らかになった。
[1]Shimizu and Okamoto 2016, Contrib Mineral, 171, 1-18
[2]Uno et al., 2002 PNAS, 119.3
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