Presentation Information
[G-P-1]Geochemistry, zircon U–Pb ages and Lu–Hf isotopes of the Paleozoic Maizuru Granites, Southwest Japan
*Kenta Kawaguchi1,2, Nobuhiko Nakano2, Tatsuro Adachi2, Ji Wan Jeong2, Fransiska Ayuni Catur Wahyuandari2, Kaushik Das1, Sota Muroi1, Kosuke Kimura3 (1. Hiroshima Univ., 2. Kyushu Univ., 3. Osaka Metropolitan Univ.)
Keywords:
Northern Zone of the Maizuru Belt,Zircon U–Pb ages,Zircon Lu–Hf isotopes,Paleozoic,Maizuru Granites
西南日本内帯の先白亜系地体群が低角パイルナップ構造に起因する極めて複雑な地表トレースを示す中において、舞鶴帯は唯一、東北東–西南西方向に伸びる比較的直線的な帯状配列を示す。舞鶴帯は模式地の舞鶴-大江地域において岩相構成から北帯、中帯、南帯に区分され(加納ほか1959)、南帯は夜久野オフィオライトとそれに貫入するペルム紀前期の海洋内島弧起源の火成岩、中帯は背弧海盆地殻とそれを覆うペルム系舞鶴層群からなり、両者は島弧-海溝系を示す一方、北帯は舞鶴花崗岩(猪木ほか1959)と呼ばれる花崗岩類を主体とし、断片化した大陸地殻の様相を呈する(Fujii et al., 2008; Suda et al., 2014)。舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯からはシルル紀–デボン紀と、ペルム紀–トリアス紀の花崗岩類が報告され、花崗岩類の年代の類似性から、同地域の舞鶴帯北帯はロシア沿海州のKhanka地塊に起源を持つ考えが提唱されている(Fujii et al., 2008; Tsutsumi et al., 2014)。一方、舞鶴帯西端部の津和野地域からは新太古代と古原生代の火成岩-変成岩複合岩体が産出し、それらの起源は北中国地塊が想定されている(木村ほか2019; Kimura et al., 2021)。これらの相反する対比は、舞鶴帯北帯が様々な起源の大陸地殻物質を断片的に含む複合岩体であることを示唆している。本研究では、舞鶴-大江地域における舞鶴帯北帯の花崗岩類について、ジルコンU–Pb年代測定、ジルコンLu–Hf同位体組成測定、全岩化学組成測定を行い、マルチ同位体データから舞鶴帯北帯の起源推定を試みた。
舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯は、レンズ状の蛇紋岩を部分的に含む高角度の市原谷断層により東部岩体と西部岩体に区分される。東部岩体の花崗岩類は共通してカタクラシスによる変形が顕著で、一方西部岩体の花崗岩類はマイロナイト変形が卓越する。西部岩体の黒雲母花崗岩からはオルドビス紀(464–447 Ma)、角閃石-黒雲母花崗閃緑岩からは石炭紀後期(311–301 Ma)のジルコンU–Pb年代が得られ、ジルコンの組織に基づくとこれらは貫入・固結年齢を示す。一方、東部岩体の黒雲母花崗岩からはペルム紀前期(289–281 Ma)のジルコンU–Pb年代が得られ、これらも貫入・固結年齢を示す。ペルム紀前期の黒雲母花崗岩は有意に古いインヘリテッドジルコンを欠く一方、オルドビス紀と石炭紀後期の花崗岩類は共通して約950–650 Maのインヘリテッドジルコンを含む。ジルコンのLu–Hf同位体組成は、U–Pb年代値(t)を用いコンドライトの値で規格化したεHf(t)値で示すと、オルドビス紀の黒雲母花崗岩は+1.0から+3.1、石炭紀後期の角閃石-黒雲母花崗閃緑岩は+0.2から+1.7の値を示す一方、ペルム紀前期の黒雲母花崗岩は+4.4から+12.2を示す。これら古生代花崗岩類の全岩化学組成は共通して重希土類元素に中程度に涸渇したパターンを示し、非アダカイト質の性質を示す。またNb–Taの負異常の程度は典型的な火成弧で形成された花崗岩質岩の組成幅とよく一致し、判別図では火成弧組成を示す。まとめると、舞鶴-大江地域のオルドビス紀と石炭紀後期花崗岩類は、共通して火成弧において新原生代の地殻物質を溶融して形成されたと考えられる。一方、ペルム紀前期の黒雲母花崗岩は、火成弧で形成されたものの、起源となった地殻は石炭紀後期までのものとは大きく異なり、より新規の地殻が溶融したことにより形成されたことが示唆される。北東アジア東縁一帯を見渡すと、石炭紀の沈み込みが認められない南中国地塊東–南縁(例えばLi et al., 2012)と、古原生代のクラトンを主体とする北中国地塊東縁(例えばKang et al., 2023)は舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯の起源とは考えにくい。一方、舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯から得られたマルチ同位体データの特徴とよく一致する花崗岩類は、北東アジアにおいてはKhanka-Jiamusi地塊に広く認められ(例えばZhang et al., 2018)、舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯は同地塊に起源を持つと考えられる。
Fujii et al. (2008) Island Arc, 17, 322–341.
猪木ほか(1959) 地調月報, 10, 1053–1061.
Kang et al. (2023) Earth-Sci. Rev., 247, 104605.
加納ほか(1959) 地質学雑誌, 65, 267–271.
木村ほか(2019) 地質学雑誌, 125, 153–165.
Kimura et al. (2021) Earth Planet. Sci. Lett., 565, 116926.
Li et al. (2012) Chem. Geol., 328, 195–207.
Suda et al. (2014) J. Geol. Res., 2014, 652484.
Tsutsumi et al. (2014) J. Mineral. Petrol. Sci., 109, 97–102.
Zhang et al. (2018) Gondwana Res., 99, 149–162.
舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯は、レンズ状の蛇紋岩を部分的に含む高角度の市原谷断層により東部岩体と西部岩体に区分される。東部岩体の花崗岩類は共通してカタクラシスによる変形が顕著で、一方西部岩体の花崗岩類はマイロナイト変形が卓越する。西部岩体の黒雲母花崗岩からはオルドビス紀(464–447 Ma)、角閃石-黒雲母花崗閃緑岩からは石炭紀後期(311–301 Ma)のジルコンU–Pb年代が得られ、ジルコンの組織に基づくとこれらは貫入・固結年齢を示す。一方、東部岩体の黒雲母花崗岩からはペルム紀前期(289–281 Ma)のジルコンU–Pb年代が得られ、これらも貫入・固結年齢を示す。ペルム紀前期の黒雲母花崗岩は有意に古いインヘリテッドジルコンを欠く一方、オルドビス紀と石炭紀後期の花崗岩類は共通して約950–650 Maのインヘリテッドジルコンを含む。ジルコンのLu–Hf同位体組成は、U–Pb年代値(t)を用いコンドライトの値で規格化したεHf(t)値で示すと、オルドビス紀の黒雲母花崗岩は+1.0から+3.1、石炭紀後期の角閃石-黒雲母花崗閃緑岩は+0.2から+1.7の値を示す一方、ペルム紀前期の黒雲母花崗岩は+4.4から+12.2を示す。これら古生代花崗岩類の全岩化学組成は共通して重希土類元素に中程度に涸渇したパターンを示し、非アダカイト質の性質を示す。またNb–Taの負異常の程度は典型的な火成弧で形成された花崗岩質岩の組成幅とよく一致し、判別図では火成弧組成を示す。まとめると、舞鶴-大江地域のオルドビス紀と石炭紀後期花崗岩類は、共通して火成弧において新原生代の地殻物質を溶融して形成されたと考えられる。一方、ペルム紀前期の黒雲母花崗岩は、火成弧で形成されたものの、起源となった地殻は石炭紀後期までのものとは大きく異なり、より新規の地殻が溶融したことにより形成されたことが示唆される。北東アジア東縁一帯を見渡すと、石炭紀の沈み込みが認められない南中国地塊東–南縁(例えばLi et al., 2012)と、古原生代のクラトンを主体とする北中国地塊東縁(例えばKang et al., 2023)は舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯の起源とは考えにくい。一方、舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯から得られたマルチ同位体データの特徴とよく一致する花崗岩類は、北東アジアにおいてはKhanka-Jiamusi地塊に広く認められ(例えばZhang et al., 2018)、舞鶴-大江地域の舞鶴帯北帯は同地塊に起源を持つと考えられる。
Fujii et al. (2008) Island Arc, 17, 322–341.
猪木ほか(1959) 地調月報, 10, 1053–1061.
Kang et al. (2023) Earth-Sci. Rev., 247, 104605.
加納ほか(1959) 地質学雑誌, 65, 267–271.
木村ほか(2019) 地質学雑誌, 125, 153–165.
Kimura et al. (2021) Earth Planet. Sci. Lett., 565, 116926.
Li et al. (2012) Chem. Geol., 328, 195–207.
Suda et al. (2014) J. Geol. Res., 2014, 652484.
Tsutsumi et al. (2014) J. Mineral. Petrol. Sci., 109, 97–102.
Zhang et al. (2018) Gondwana Res., 99, 149–162.
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